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『このあと どうしちゃおう』刊行記念 ヨシタケシンスケさんインタビュー <第2回>

ヨシタケシンスケさんの「発想絵本」シリーズ最新刊の発売を記念した、
編集担当・沖本による、ヨシタケさんロングインタビューを連載中です。


★第1回「子ども時代と死」はコチラ → CLICK!!



『このあと どうしちゃおう』刊行記念 ヨシタケシンスケさんインタビュー
第2回 世の中に期待しなければ、死にたくならない?


ーーヨシタケさんは、今まで生きてきて、死んじゃいたいな……って思ったことはありますか?

ヨシタケシンスケさん(以下:ヨシタケ) それは、ないです。死ぬというのは、ものすごくパワーとふんぎりがいることですよね。
それをする勇気がない。自分が自分で死ぬことの面倒くささに耐えられないです。


ーー いちども死にたいと思ったことがないというのはすごいですね。かなりの幸せ者ではないですか?

ヨシタケ 幸い、そこまで苦しいと思うことが起きてこなかったのも事実ですが、僕なりの処世術というのがあるんです。
それは、「世の中に期待しないこと」「幸せのしきい値を下げる」こと。


そもそも、「こんなはずじゃなかった」という状況は、
まず「こうであってほしい」という希望や期待が裏切られていることによって起きている。
そもそも、最初から期待をしなければ、もっと言うと、常に最悪を想像していれば、
現実に起こることは、常に「ちょっと幸せ」な状態になるんです。
目標を一番下に下げれば、たいていのことにもがっかりしません。
むしろ、「あっ、酸素がある。ありがたい!」という風になってくる(笑)。



ーーなるほどー(笑)。
世の中には、仕事でも成功していて、お金持ちで美人でハンサムで、
何もかも持っているように見えるのに不幸な人もいれば、
けっこうギリギリっぽいけど、やたら生き生きして楽しそうに生きている人もいます。
その心持ちの差はなんだと思いますか?

ヨシタケ それはやはり、「ありがたみ」を感じられる心があるか、だと思います。
その設定値が高すぎると、「仕事で成功しても、妻が冷たい、
旦那がかまってくれない、子どもが有名大学にいかない……」みたくなっちゃう(笑)。


ーー確かに(笑)。
私はそこに、さらに自分の置かれた状況を面白がったり、
笑い飛ばしたりできる強さが心に宿っているか、というのも大切だと思います。
病気のときや弱っているときはさすがに難しいけど、
基本的には、人間はユーモアや笑いをパワーにして前に進んでいく強さがあると思います。

ヨシタケ それはほんとにそう思います。
だから、子どもに対しても「だいじょうぶ、どんどん面白がったらいいんだよ」と、
伝えられるような絵本をつくっていきたいと思っています。
世の中には、悲しいこと、つらいことがいっぱいある。
だからこそ、面白がっていければいいし、
そのセンスや底力を磨くようなきっかけに僕の本がなってくれたら嬉しいです。



ーー「ユーモアで乗り越えよう」という力が、本来人間にはそなわっていると思えるのは救いですよね。

ヨシタケ そうですね。でも、単純に、そうやってどんどん面白がっていいんだよ、
と伝える場が、最近少なくなってきてると僕は思うんです。
僕が思う余裕のある世の中、豊かな世の中とは、
どんなテーマでも「品のあるユーモア」で、きちんとふざけられる世の中だと思います。
でも最近、なんだか窮屈で追いつめられている人が多いような気がしますね……。


ーーカリカリしてる人多いですもんねぇ。
あと、ひとつ思うのは、今はいろいろなことが明らかになりすぎている。
それで、そういう情報が、スマホ上にもあふれているじゃないですか。
で、それが強迫観念みたいにお母さんを追いつめて、お母さんも頑張りすぎて、躍起になって、疲れちゃう。
結果、子どもも疲れちゃう……みたいな構図が、なんとなく、あるのかなと思います。
ヨシタケ そこをもっと、気楽に、力をぬいて考えられるような本がつくれたらいいな、とは思いますね。
基本、すべてに正解があるわけじゃないし、僕は自分の本で価値観を押しつけたりはしたくない。
僕はよく、「風が抜ける」というような表現をするのですが、
あくまで自分が面白いという提案をして、あとは読者の人にゆだねる、
そういう押しつけがましさのない絵本をつくっていきたいと思います。


(聞き手/編集部 沖本敦子)



次回の更新は、5/6(金)の予定です。
おたのしみに。


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