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『このあと どうしちゃおう』刊行記念 ヨシタケシンスケさんインタビュー <第1回>

いよいよ発売日になりました!
ヨシタケシンスケさん最新刊『このあと どうしちゃおう』。


▼内容紹介

しんだおじいちゃんがかいた「このあと どうしちゃおう」ノートがでてきた。
「じぶんが しょうらい しんだら どうなりたいか」が、かいてある。
「うまれかわったらなりたいもの」「こんなかみさまにいてほしい」......
なんだかおじいちゃん、たのしそう。
でも、もしかしたらぎゃくだったのかもしれない。
ぼくだったら、どうしちゃおうかな。
いま、いきているあいだに、かんがえてみよう!


さて、刊行を記念して、編集担当・沖本が、
ヨシタケさんへのロングインタビューをいたしました。
絵本のなかには、インタビューの一部と、描きおろし4コママンガを収録した、
ブックレットがはいっていますので、そちらとあわせてお読みください。



『このあと どうしちゃおう』刊行記念 ヨシタケシンスケさんインタビュー
第1回 子ども時代と死



ーー今回の新刊、『このあとどうしちゃおう』は、ズバリ、死がテーマです。
ヨシタケさんは子ども時代、死について、どんな風に考えていましたか?
ヨシタケシンスケさん(以下:ヨシタケ) 死ぬのがこわいと思った記憶はあんまりないです。


ーー「お父さんやお母さんが死んじゃったらどうしよう」とか、子どもの頃ってよく考えませんでした?
ヨシタケ いやー、そんなに考えませんでしたね。


ーーわりと、ぼんやりした子ども……(笑)。
ヨシタケ そうですね。わりとぼんやりした(笑)。
というか、むしろ、死について考えると悲しくなっちゃうから、あえて考えないようにしていましたね。
そういう気質は、今でも自分の核になっています。
僕はネガティブ気質なんで、自分に直接関係ないニュースでも、すぐに引っ張られちゃって落ち込んじゃう。
ただ、現実世界の悲しいことに引っ張られすぎていると、日常生活がうまくまわらなくなっちゃうから、
あえて面白いことを考えたり、表現したりすることでバランスをとっているところがありますね。



ーーヨシタケさんが、最初に死を意識したのって、いつですか?

ヨシタケ ひいおばあちゃんのお葬式で、たぶん3、4歳だったと思います。
当時の火葬場って、今みたいじゃなくて、結構な「焼き場」って感じなんですよね。
そこでひいおばあちゃんが燃やされちゃったことに、ものすごくびっくりして、泣いたのを覚えてます。
「燃やしちゃった! なんでこんなことすんの!?」って(笑)。
「なにも燃やすことないじゃない」と、帰りのタクシーでもずっと泣いていましたね。
死んだことが悲しいというより、「あっ、燃やしたっ!」というショックで。


ーーそれに対して、お母さんは?
ヨシタケ 母も泣きながらも、「イヤ、そうじゃなくて……」みたいな(笑)。


ーー『フランダースの犬』みたいなの読んで、泣いたりしませんでした?
ヨシタケ 僕はああいうのは、悲しくなっちゃうから、ほんとに苦手なんです。
僕の息子なんか見ていて驚くのは、彼はああいうのが好きで
「こういう泣けるの、好きなんだよね〜」とか言ったりする(笑)。
僕はそういうのがダメで、とにかくその手の話題を入れないようにして生きてきました。
嫌すぎて、ずっと避けてきたんです。だから、そういう意味では今回の「死」というのは、
僕の中でずっと避けてきたテーマで、向かい合って積み上げてきたテーマではないんですよ。


ーーそれを絵本にしようと思ったのはなぜですか?
ヨシタケ やはり、両親の死がきっかけです。それから震災もありますね。
僕は27歳で母を、33歳で父を亡くしているんですけど、両親の死を経験して、
人は本当に死に直面すると、「死」についてまるで語れない、ということを痛感しました。
「家族だから話しておきたい」と思うのと同じ強さで、
「家族にはつらい思いをさせたくない」という気持ちが働いて、
結局「……すぐによくなるよ」という嘘をつきあうだけになっちゃう。


だったら、健康でまったく死の影なんてなく、あっけらかんと話しておける時期に、
面白おかしくでもいいから、死について両親と意見交換ができていたらよかったな、
そういうきっかけになるようなものがつくれないかな、というのが、
このあと どうしちゃおう』をつくりたいと思った動機です。


ーー確かに、死には「かんたんに語っちゃいけない」というような、タブー感が漂いますよね。
ヨシタケ はい。でも、健康なときに「死」について話し合うのは、できればやった方がいい。
将来、大事な人が死んでしまった後で、そのとき話したことが救いになるかもしれないし。
ただ、「よしっ、じゃ、今から死について語ろっか!」といきなり言われても、何かきっかけがないと厳しい。


だから、今回の『このあと どうしちゃおう』は、親子で読みながら、
気楽にライトに死について話してもらえるような絵本にしたいな、と思いながらつくりました。
死は生の延長線上にあるもので、誰もが平等に経験するもの。
だったら、もっと自由に、気軽に話したっていいじゃない、と思うんです。
もっと言うと、世の中にはふざけたり、冗談めかしてじゃないと語れないこともたくさんある。



ーーヨシタケさんは、息子さんたちはと「死んだらどうなる?」的な話をしたことありますか?
ヨシタケ 長男はいま9歳なんですけど、割と空気を読む子なので、その手のことはあんまり聞いてこないですね。
でも、人が死んじゃったりする映画とか好きでよくみているので、彼なりに思うところはあると思います。
下の4歳の子は、まだ、死に関してはまったく何も聞いてきませんね。


ーー親として、子どもたちから死についてきかれたら、どんな風に答えたいですか?
ヨシタケ まず、死は堅苦しいものじゃなく、ふざけてもいいんだよ、ということを教えたい。
なぜなら、本当に死んじゃったら、ふざけることもできないですから。
だから、「不謹慎だから、やめなさい」とかは、言いたくないですね。


子どもがきいてきたら、一緒にいろいろ話して考えたいです。
ものすごいことを質問してくるのが子どもなんで、親の僕も、なるべくそれを面白がりたい。
そのためには、親である僕たちが余裕を持ちたいですね。


(聞き手/編集部 沖本敦子)



第2回は、4/28(木)更新予定です。
おたのしみに!