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『このあと どうしちゃおう』刊行記念 ヨシタケシンスケさんインタビュー <第3回>

ヨシタケシンスケさんの「発想絵本」シリーズ最新刊の発売を記念した、
編集担当・沖本による、ヨシタケさんロングインタビュー、いよいよ最終回です。


『このあと どうしちゃおう』刊行記念 ヨシタケシンスケさんインタビュー 
第3回 死にたいという子どもに、大人は何ができるのか


★第1回「子ども時代と死」はコチラ → CLICK!!
★第2回「世の中に期待しなければ、死にたくならない?」はコチラ → CLICK!!


ーー最近、自殺してしまう子どもたちのニュースなどをよく聞きます。
死んでしまったらその子を愛する人たちを永遠に苦しめることになるから、
死んではいけないと思うのですけど、ただ、悩みの渦中にいる子には、
そんな正論いっても意味ないですよね。

ヨシタケシンスケさん(以下:ヨシタケ) 追いつめられている子に正論を言ってもだめですよね。
大人が子どもに対して「死んではいけない」と説く前に、
ぼくたち大人が子どもの心にひびくアプローチをいかに持つか、だと思うんです。
「気持ちはわかるけど、とりあえずごはん食べてから考えよっか」とか、
「これ、ものすごくやわらかいんだけど、ちょっとさわってみない?」とか、何でもいいんですけどね。
素晴らしい本の一説を、絶妙のタイミングで言える知識とセンスとか、10秒でできるたとえ話とか。
子どもにあれこれお説教めいたことを言う前に、大人がまずセンスを磨いて、引き出しをたくさん持つべきだと思います。


あと、逆に距離が近すぎると言えないこととかもありますね。
いじめ問題とかもそうだと思いますけど、親だから言えないとか、先生だから言えない、とか。
そういうときに、繊細な距離感とか、煩わしい人間関係とか一切抜きに、
子どものが近づけるメディアとして、本があるのだと思います。テレビとか映画とか、漫画もそう。



ーー本で得た知識は、鎧にもなるし、シェルターにもなりますね。
自分の感性やセンスを磨いておくと、意地悪言われても、すっとかわせたり、
冗談で返したり、ケムに巻いたりとか、いろいろな処世術が身につけられる。
ヨシタケ ほんとにそうだと思います。
さらに、本のつくり手の立場から言うと、本だからこそ言えちゃうことがたくさんある。
たとえば、学校の先生は立場上「友だちは大切に、友だちはたくさんいた方がいい」と、
言わざるを得ない場合がたくさんあると思います。
「友だち、つくる必要はない!」と先生がいきなり言っちゃうのは、むずかしい。
でも、僕なら「友だちはいなくても大丈夫」とか、本で言うことができますよね。


りんごかもしれない』なんて、友だちどころか、僕の頭の中だけで完結している本ですし、
ぼくのニセモノをつくるには』でも、引いてみれば、キミという人間はたくさんいるし、
外から見ると、人はみな、あんまり変わらない、というメッセージをこめています。
「キミは貴重な存在で、キミにしかできないことがある!」と言われ続けることがプレッシャーになったり、
社会に対する不信感になったりする子もいると思うからです。


ーー自分らしい視点や、発想力があれば、無限にたのしくやっていける、
というメッセージは、『りんごかもしれない』の一番基本のメッセージ。
そういうところを、押しつけがましくなく、すっと提示してみせるのが、ヨシタケさんの本の魅力だと思います。

ヨシタケ 今は、物ごとを深く理解してくれる人がいる一方で、全然わかってくれない人もいる。
でも、両方の人が「なにこれ、面白そう!」と手にとってくれるようなものをつくれたらいいな、と思っているんです。
ぼくたちは大人ですから、わかってもらえないことを嘆いているだけではダメで、
じゃあ、わかってもらえるように表現方法を考えたり、
理解力が高い人にも、そうでない人にも、興味をもってもらえるような本づくりをしたいと思います。


ーー私は、今回の『このあとどうしちゃおう』という作品で、
ヨシタケさんはまたひとつ、死がもつ固定観念のようなものに風を通したというか、
ヨシタケさんならではの方法で、メッセージを読者の方に伝えられたと思います。
作家さんとしては、お仕事完了で、ひと休みですね。
あとは、読者のみなさんに、自由に楽しんでいただけたらいいですね。



ーー最後に、新刊『このあと どうしちゃおう』の刊行に際し、読者の方へひとことメッセージをいただけますか?
ヨシタケ 先日、うちの9歳の息子に読んでもらいました。
彼の感想はひとこと。「うん! じごくのページがおもしろいね!」でした。
本来のテーマは全然伝わりませんでしたが(笑)、むしろ単純に笑いながら読んでくれたことにホッとしました。
テーマがテーマなだけに、「ウチの子にはまだ早いかな?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、
あまり深く考えずに、お子さんの年齢に関わらず、一緒に楽しく読んでもらえたら嬉しいな、と思います。


「死について考えるきっかけになってほしい本」であると同時に、
「どれが好き? どれがいい? と、単純に面白がって読んでもらえる本」を目指したつもりです。
「ウチの子、わかってなかったですけど、面白がってました」と言っていただけたら、とても嬉しいです。


(聞き手/編集部 沖本敦子)



ヨシタケシンスケ「発想絵本」シリーズ 好評発売中!★
しんだらどうなる? どうしたい?
いきてるあいだに、考えてみよう!
このあと どうしちゃおう


考えることをはてしなくたのしめる!
りんごかもしれない


自分を知るって、面倒だけどおもしろい!
ぼくのニセモノをつくるには