ブロンズ新社公式ブログ

絵本やイベント情報についてご紹介します。

ブロンズ新社創立40周年記念事業「絵本づくりの未来形」①

昨年2023年に、小社は創立40年を迎えました。

40周年は、過去をふりかえるのではなく、前を向いていたいと思いました。

浮かんだキイワードは「絵本づくりの未来形」

この10年、絵本の可能性を切り拓き、世界を刺激してきた作家のトークを開催しようと考えました。ウクライナの作家、ロマナ・ロマニーシンとアンドリー・レシヴの両氏、そして、作家デビュー10周年を迎えたヨシタケシンスケ氏です。彼らはともにボローニア国際ブックフェアでラガッツィ賞を受賞しているので、板橋区立美術館に会場をご提供いただきました。

昨年9月にロマナ&アンドリー両氏が来日した際には、5連続イベントを企画し、全国の書店員の方たちを招いたトーク&パーティのEAST&WEST会、桐朋小学校(東京都調布市)を訪問し6年生を対象にウクライナの現状を語った特別授業、さらに、日本、韓国、ウクライナの親子が参加する大規模ワークショップも開催することができ、多くの人たちの出会いと熱い思いが交錯したイベントとなりました。

 

来日への道のり

戦争のただなかウクライナから来日することは、容易ではありませんでした。ロマナはスロバキアブラチスラバまで行って、1週間滞在後にやっとビザを取得。16歳から60歳の男性の出国が禁じられているので、アンドリーは国にアーティストビザを申請して、出発1週間前にやっと日本訪問が認められました。

 

桐朋小学校でレクチャー

9月22日、6年生2クラス約70人を対象に特別授業が行われました。ウクライナでのふだんの暮らしや絵本制作のようすなどをスライドで映しながら、わかりやすい言葉で語ってくれました。

「戦争中でも、なるべくふつうの生活を送るように心がけています」と語るふたりの言葉に多くの子どもたちが驚いたようす。着弾時刻を予測するミサイルアプリを活用して生活しているという話に、緊迫感をもって聞きいりました。

「わたしたちにできることはなんですか」という生徒の質問に、「あなたたちにできることはただひとつ。しっかりと勉強すること」というアンドリーの言葉が強く印象に残った授業でした。

 

80人参加の大人と子どものワークショップ

翌日は、渋谷で「アートでこえよう、心の壁、世界のボーダー」と題するイベントへ。国際アートセラピー色彩心理協会主催の「色彩フォーラム」で、代表理事の末永蒼生さんとのトークとワークショップが行われました。

ワークショップでは、日本、韓国、そしてウクライナから避難している親子連れが16組に分かれて、大きな画用紙に「行ってみたい場所」を描きました。最後に16枚をつなぎ合わせてひとつの大きな地図が完成!

イベントを終えたロマナとアンドリーは「子どもはもちろん大人も夢中になって制作していたので驚いた。みんな色をたくさん使ってカラフルに描いていたのもすばらしかった」と話していました。

 

全国の書店員が参加したEAST&WEST会

40周年イベントのメインは、神保町の出版クラブで開催した「EAST&WEST会」。全国の書店員約130人をご招待した小社主催のトーク&パーティです。

第1部は新刊説明会、第2部はロマナとアンドリーとともに、訳者の金原瑞人さん、広松由希子さん、小社代表で編集長の若月眞知子が登壇。『戦争が町にやってくる』『旅するわたしたち On the Move』についての制作話を伺いました。

また、ふたりの作家はウクライナの出版界について語りました。戦争前より紙の本を求める需要が高まっていること、2023年のウクライナブックフェアが大盛況だったこと、新規書店を積極的に開店させる出版社の話、武力で戦うだけでなく出版文化をしっかりと守ろうとしていることなど。参加者は大いに触発された様子でした。

第3部のパーティでは「Будьмо(ブディモ)」とウクライナ語で乾杯。にぎやかな楽しいひとときを共有しました。

 

板橋区立美術館レクチャー

26日は板橋区立美術館で行われた、絵本作家を目指すひとたちに向けたトーク。『旅するわたしたち On the Move』の制作過程を中心に独特の技法や構図について語ってくれました。

彼らの絵本に特徴的な特色印刷は、ロマナの父で画家のロマン氏が版画で用いる手法に影響されたとのこと。印刷所と何度も打ち合わせを重ね、ときにバトルもあったとか。

膨大なデータの検証や科学雑誌の精読など、ノンフィクションの絵本をつくる際に重要となる作業に相当な時間をかけたことを明かしてくれました。

 

横浜でウクライナの交流会

27日は横浜でウクライナから避難されている女性たちとの交流会を行いました。避難先での暮らしについて耳を傾けるふたり。参加者から、日本でウクライナの絵本が広まっていることが嬉しいとの声も。ウクライナで起きていることを忘れないでほしいというふたりの思いが、参加者と共有できたことを感じさせてくれました。

 

そして京都へ

大垣書店イオンモールKYOTO店と丸善京都本店を訪れ、サイン色紙を書いてご挨拶。その後、お寺を訪れ、庭園を楽しみました。

さらに、京都在住のtupera tuperaさんのアトリエを訪問し、アーティストユニット同士すっかり意気投合したようすでした。

 

11日間の日本滞在を終えた別れ際の、「戦争が終わったらウクライナで会いましょう」というふたりの言葉に、ウクライナに一日も早く平和が訪れるようにと、願わずにいられませんでした。

 

▼「絵本づくりの未来形」② ヨシタケシンスケさんの記事へつづく

staffroom.hatenablog.com

 

著者紹介

(左から)アンドリー・レシヴ、ロマナ・ロマニーシン

絵本作家、アーティスト。ともに1984年生まれ。ウクライナ・リビウを拠点に活動するユニット。

 

作品紹介

『戦争が町にやってくる』 金原瑞人
― 戦争を体験した2人が描く、平和と戦争の絵本
・発売日:2022年6月3日(金)
・定価:1,760円(税込)
・書籍サイト: https://www.bronze.co.jp/books/9784893097095/

 

『旅するわたしたち On the Move』 広松由希子 訳
― 万物の移動について、壮大なスケールで描いたビジュアルブック
・発売日:2023年5月18日(木)
・定価:2,420円(税込)
・書籍サイト: https://www.bronze.co.jp/books/9784893097194/