ブロンズ新社公式ブログ

絵本やイベント情報についてご紹介します。

「どいかや絵本の世界展」町田市民文学館で開催!

絵本作家・どいかやさんの展覧会「チリとチリリ ―どいかや絵本の世界展」が、7月20日(土)より町田市民文学館ことばらんど(東京都町田市森野)でスタートします。

会期中は、どいさんの講演会やワークショップなども予定されているほか、展覧会を見てクイズに答えるとプレゼントがもらえるイベントもございます。
詳しくは以下のWebサイトよりご確認ください。
https://www.city.machida.tokyo.jp/bunka/bunka_geijutsu/cul/cul08Literature/tenrankai/doikaya.html

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どいかや絵本の世界展」

会期:7月20日(土)~9月23日(月)
会場:町田市民文学館ことばらんど
   https://maps.app.goo.gl/mTFGehQR7YXqsjqq8
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かえると渡り鳥の交流を描いた『かえるのピータン』の原画展示もございます。
どいさんの、自然や小さな生きものたちをいとおしむように描く、繊細で優しい原画をぜひ間近でお楽しみください。

 

『かえるのピータン
どいかや 作(2008年刊)

かえるのピータンのくらす池に、わたり鳥のパーチクがやってきます。ピータンは池の美しい四季を、パーチクは世界の旅を語ります。
それぞれの生き方が、それぞれにすばらしいことを教えてくれる絵本。

<編集者:山縣彩さんより>
ピータンは、
土地に根付いて暮らす存在と旅をしながら暮らす存在の
それぞれの素晴らしさを
かえると渡り鳥のひとときの交流を通して描いています。
特にピータンは、一つの土地に暮らしながら
折々の四季や、育っていく生命などの
変わりゆくさまを愛おしみ
旅している人と変わらないくらい
豊かで大きなものを感じながら生きています。
その姿は、自然豊かな土地で家族と猫たちと暮らす
著者のどいかやさんそのもののようにも感じられます。
ローカルに回帰する人が増えたコロナ以降の今の時代にこそ、
読んでいただきたい絵本だなと思います。

<Webページ>
https://www.bronze.co.jp/books/9784893094407/

 

愛甲恵子さんのイランレポート②

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サラーム! こんにちは。
イラン発の平和を考える絵本『きみは、ぼうけんか』(シャフルザード・シャフルジェルディー・文/ガザル・ファトッラヒー・絵)の翻訳を担当しました愛甲恵子です。
わたしはこの5月、イランを訪れました。イランといってもほとんど首都テヘランにいたのですが、滞在中は、ブックフェアに通ったり、著者のおふたりに会ったり、出版社を訪ねたりしました。そのようすや、著者や編集者からうかがった、『きみは、ぼうけんか』誕生までの物語を、写真も交えながらみなさんにお伝えしたいと思います。

≫イランレポート①はこちら

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『きみは、ぼうけんか』の著者に会う!

今回の旅の目的のひとつが『きみは、ぼうけんか』の著者であるシャフルジェルディーさんとファトッラヒーさんに会うことでした。おふたりとは、翻訳を進める段階でもやりとりをしていましたが、翻訳とは直接関係のないこと、例えばこの絵本が誕生した経緯や、完成までのプロセスなどは、ぜひお会いして話をうかがってみたいと思っていたのです。それぞれ独立した流れを持つ絵と文が、ひとつの作品として完全に調和し、著者がふたりであるとはにわかに信じがたいようなこの絵本が、いったいどのようにして生まれたのか、とても興味がありました。

お会いしたのは、7年前にテヘランにできたばかりの「book garden」という、大きな本屋を含む複合商業施設に併設されたカフェです。

左:絵を描いたファトッラヒーさん、右:文章を書いたシャフルジェルディーさん

結局おふたりとは3時間近く話しこみ、いろいろなことをうかがったのですが、さらに別の日に、編集を担ったサハル・タルハンデさんのお話も聞くことができて、この絵本がだいたい以下のような経緯で生まれたことがわかりました。

 

『きみは、ぼうけんか』が生まれた経緯

この物語は、巻末の著者の言葉にあるとおり、文章を書いたシャフルジェルディーさんが、幼い娘さんに戦争をどうやったら伝えられるだろうか、と考えたことが発端でしたが、具体的なストーリーが生まれたのは、2017年にテヘランで開催された絵本づくりのワークショップでのことです。

このワークショップは、ふだん交流の少ない若手の作家と画家が協働して絵本をつくることを目的としたもので、コンペで1位を獲得した作家と画家は、イタリア・ボローニャブックフェアにご招待、という特典付き。そこにおふたりが参加したのです。

でも、最初からふたりで絵本をつくろうとしたのではありません。まず作家であるシャフルジェルディーさんが物語と絵本の構成のアイディアを提示。講師の提案で、ファトッラヒーさんに話がいき、ふたりで話したところ、作品のイメージをかなり共有できて、一緒に進めることになったのだそうです。こうしてこのふたりのペアが誕生しました。

ふたりは約3週間で、コンペの参加条件である、ストーリーボード(絵本の構成が見通せるラフ絵)と一場面の完成形の絵をつくりあげます(このとき完成させたのは、最後までほぼ変更がなかった海の場面の絵)。そしてみごと1位を獲得しました。

ボローニャに行くことになったふたりは、外国の出版社に作品を見せるため、大急ぎで、英語やドイツ語などの簡易本を製作します。これがそのドイツ語版。

出版された絵本の表紙とずいぶん違いますよね。お兄ちゃん、だいぶ年上に見えますし、帽子もあの黄色じゃない! 実は中の絵の雰囲気もだいぶ違います。ここで中身までお見せすることはできないのですが、シャフルジェルディーさんの表現を借りれば「最初はもっと、セ・ボオディー(三次元的、立体的)だったよね」。物語もずっと短くて、物語というよりは詩のような言葉でした。

この簡易本を携えて訪れた2017年のボローニャブックフェアでは、いくつかの外国の出版社が興味を示したそうですが、やはり最初はペルシャ語で出版したい、という結論に至り、TUTIが出版を担うことになります。

とはいえ、すんなりと刊行に至ったわけではありませんでした。TUTIのディレクターで編集者でもあるサハル・タルハンデさんは、この作品を世に送りだすためには、もう少し工夫が必要だと考えたのです。

タルハンデさんと愛甲。TUTI出版の事務所で

タルハンデさんは、戦争の描写が子どもたちの負担にならないように、という著者の思いが、より具現化されるようアドバイスをしていきました。例えば完成版では、ふたりが家を出たあとは、どの場面にも、物語に直接関与しない多くの人々が描かれていますが、これはタルハンデさんとのやりとりの末に生まれたものです。厳しい現実の中にいるのが、世界でたったふたりではないということを、どの場面においても伝えた方がいいという配慮です。それは、絵の中のふたりがさびしい思いをしないように、ということでもあります。

一方、文章については、読者が内容をより理解しやすいよう、物語の形に書き直されました。ですがその際も、物語の舞台や時代などは明らかにせず、主人公のふたりが経験していることが、この地球上のどこかで今現在起こっていることだ、と直接伝わるようにするという原則は貫かれました。

このほか、最後の場面だけ画面全体に色をつけることや、最初と最後に祈りの表現として折り鶴の絵を入れることは、修正を重ねる中でファトッラヒーさん自身のアイディアによって取りいれられたそうです。

そして、物語で鍵となる黄色い帽子ですが、これは旅行用の帽子をイメージして描いたものだそうで、チェック柄だとイギリスを想起させるので黄色にしたとのこと。それが図らずも日本においては小学生がかぶる黄色い帽子によく似た形となりました。


このようなさまざまな修正ののち、2019年、『きみは、ぼうけんか』のペルシャ語版が刊行されました。
お披露目がコロナの始まりの時期と重なって、宣伝はほとんどできなかったそうです。
ですがその後、2021年に、ファトッラヒーさんの絵はブラチスラバ世界絵本原画展で金牌を受賞。翻訳版が、トルコ、スペイン、オランダなどで刊行され、日本にもやってくることになります。さまざまな言語の読者を得ることになりました。

 

戦争、難民、という現在進行形の、いまや全地球をあげて考えていかなければならないテーマを、子どもたちにどう伝えるか……この簡単ではないミッションについて、著者と編集者が粘り強く考え、ひとつひとつ形にしていった結果が『きみは、ぼうけんか』。そのことが、今回お話をうかがって、とてもよくわかりました。この本を日本で伝える役割を担う者として、とても大切なメッセージを受けとったと思いました。

 

というわけで、こと『きみは、ぼうけんか』に限っても、この5月のイラン滞在は、たいへん有意義なものになりました。そして、直接会って話せることのありがたさを、改めて感じました。
今回の旅の記憶とともに、『きみは、ぼうけんか』をこれからも大切に伝えていきたいと思います。

 

*今回ご紹介したドイツ語の簡易本は、年末に開催する『きみは、ぼうけんか』のパネル展で展示する予定です。この物語の「はじまり」をご覧になりたい方、ぜひご来場ください。
なお、パネル展会場は東京原宿のカフェ「シーモアグラス」です。詳細が決まり次第ブロンズ新社SNSでお知らせします!

 

テヘランの本屋さんで見かけた折り鶴のディスプレイ。こういうディスプレイ、今回何度か見かけました。

(愛甲恵子)

 

書誌情報

『きみは、ぼうけんか』

シャフルザード・シャフルジェルディー 文
ガザル・ファトッラヒー 絵
愛甲恵子 訳
定価 1,540円(本体1,400円+税)
https://www.bronze.co.jp/books/9784893097286/

※著者より日本の読者の皆さんへのメッセージ動画をお預かりしています。以下URLよりぜひご覧ください。

https://staffroom.hatenablog.com/entry/you-are-an-explorer/

 

 

▼イランレポート①はこちらから

staffroom.hatenablog.com

愛甲恵子さんのイランレポート①

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サラーム! こんにちは。
イラン発の平和を考える絵本『きみは、ぼうけんか』(シャフルザード・シャフルジェルディー・文/ガザル・ファトッラヒー・絵)の翻訳を担当しました愛甲恵子です。
わたしはこの5月、イランを訪れました。イランといってもほとんど首都テヘランにいたのですが、滞在中は、ブックフェアに通ったり、著者のおふたりに会ったり、出版社を訪ねたりしました。そのようすや、著者や編集者からうかがった、『きみは、ぼうけんか』誕生までの物語を、写真も交えながらみなさんにお伝えしたいと思います。

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テヘラン国際ブックフェア

テヘラン国際ブックフェアは、年1回のペースで10日間ほど開催される大規模なブックフェアです。今年で35回目。コロナ禍で中断したこともありましたが、その後ネットに連動する形も整え、リアルとネットで盛りあがるイベントになりました。国際ブックフェアというと、版権の取引などがメインだと思いますが、テヘランの場合は、ここ最近は特に「一般市民が国内の出版社の本を割引価格で買える機会」というイメージです。

著者のトークやサイン会、子どもたちのためのイベントが数多く企画され、食べ物の屋台もたくさん出て、今回も多くの人を集めていました。

子どもの本の出版社が集まる区画の一コマ。ブースも相当力を入れてつくります。

大きいブースには何人も案内の人がいて、おすすめの本を紹介してくれたり、どんな質問にも答えてくれます。ふらふらとブースを巡っていたわたしは、「何歳の子どもにどんな本を買いたいのか」と何度も聞かれました。「自分のためなんですよ」と答えると、ちょっと驚いた顔をしたあと、ニコッと微笑を返して「それじゃあ、こんなのどうかしら?」といろいろな本を紹介してくれました。

会場の外にはこんな方々がいたり…。

本をテーマにしたおしばいなども上演されていました。

『きみは、ぼうけんか』の原書版元であるTUTI出版のブースにも多くの人が訪れていました。

『きみは、ぼうけんか』や『ボクサー』(ハサン・ムーサヴィー作・愛甲恵子訳/トップスタジオHR刊)の原書版元であるTUTI出版のブース。TUTI(トゥーティー)とはオウムのこと。ロゴの色を組みあわせた美しいブースでした。

看板真ん中の赤字は「世界の文学への架け橋」と書いてあります。

渉外担当の方に、本の売れ行きなど、ちょっとつっこんだことをうかがったのですが、インフレの影響で本の値段を上げなくてはならないのが大変だということでした。昨年に比べ絵本の値段は3倍にせざるを得ず、そのため、ブックフェアに人はたくさん来ているのに、高価な本は敬遠され、売り上げは思ったように伸びなかったのだとか。ブックフェア自体についても、国際情勢の影響があって、今年はほとんど外国の出版社が参加せず、残念だったと言っていました。

しかしこういった厳しい状況の中でも、並べられている新刊はこれまでと変わらず魅力的で、TUTIの絵本づくりが全くブレていないことが感じられました。日本を含む外国の優れた絵本の翻訳版も出しつづけており、「自分たちがよいと思う本を子どもたちに届ける」という、子どもの本の出版社としての揺るぎのない信念が感じられるラインナップに、こちらの方が勇気づけられました。

TUTI出版の新刊の一部

 

続いて、『きみは、ぼうけんか』の著者おふたりと編集者にお会いします!

▼イランレポートの続きはこちら!

staffroom.hatenablog.com

 

第12回ブロンズ新社書店大賞<製本所見学ツアー&新刊説明会>

2日目はみんなでバスに乗って、東京・板橋区の大村製本さんの見学ツアーに出発です!


ブロンズ新社の本も数多く製本してくださっている大村製本さん。
まずは、好きな色の紙を選んで、表紙の糊付け体験をさせていただきました。

丁寧に糊を塗って貼っていきます。

こちらは糊が乾くまで一旦お預けして、出来上がりを楽しみに待ちつつ、いよいよ製本所見学ツアー、スタートです!


それぞれの工程の担当の方が詳しく説明をしてくださいます。 

普段見ることが出来ない本が出来ていく工程を間近で見せていただき、みなさん興味津々です。

そしてなんと、ちょうど良いタイミングで、製本前の新刊『どんどんめくり』(やぎたみこ 作)も見ることが出来ました!


最後に出来上がった本を受け取って記念撮影。
大村製本の皆様、貴重な経験をさせていただき、本当にありがとうございました!


2日間かけて行ったブロンズ新社書店大賞。最後は、ブロンズ新社のギャラリー 青銅RoomJで今後半年の新刊やフェアをご案内する新刊説明会を行いました。

編集者がお話する新刊の説明に、みなさん真剣に聞き入っていらっしゃいました。


2日間のイベントが無事終わり、私たちもたくさんパワーを分けていただきました。ご参加くださった書店のみなさま、作家のみなさま、そしてブロンズ新社書店大賞にご応募くださった書店のみなさま、誠にありがとうございました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

第12回ブロンズ新社書店大賞<祝賀パーティー>

授賞式の後は、隣の会場に移動して祝賀パーティーを行いました。
五味太郎さんに乾杯のご発声を頂戴して、楽しいパーティーの始まりです!

授賞式で緊張されていたみなさんも、リラックスして楽しそうにお話されていました。

鈴木のりたけさんと

中川ひろたかさんと

tupera tupera 亀山達矢さんと

あだちなみさんを囲んで

ヨシタケシンスケさんと

岡田よしたかさんと

五味太郎さん、tupera tupera 亀山達矢さん・中川敦子さんと

高山なおみさん、長野陽一さんと

会場には美味しいお料理がずらり。
どれを食べようか目移りしてしまいます。


パーティの後半は豪華賞品をかけた、じゃんけん大会を行いました!
鈴木のりたけさんに前に出ていただいて、みんなでじゃんけん!

見事勝ち抜いた3名様には、今回お越しいただいた12名の作家さんのサインが寄せ書きされた超豪華サイン色紙をプレゼント!
勝ち抜いたみなさま、おめでとうございます!!

五味太郎さんとイエーイ

しおたにまみこさんと

最後は全員で記念撮影!

みなさん良い笑顔ですね!
書店大賞1日目は大盛り上がりで終了しました。

 

 

↓↓2日目は、製本所見学ツアーと新刊説明会です!こちらからご覧ください。

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第12回ブロンズ新社書店大賞<授賞式>

出版界の最前線で活躍される書店と書店員の方々へ敬意と感謝を捧げる賞、ブロンズ新社書店大賞の授賞式を、今年も5月23日(木)に執り行いました。
こちらのブログでは、1日目の授賞式、パーティー、2日目の製本所見学、新刊説明会の様子を、3回に分けてお送りいたします。
※各賞受賞者はこちらをご覧くださいませ。 

昨年から東京ドームホテルで開催している授賞式ですが、今年は会場を地下1階から42階へ移し、昨年とはまた違った雰囲気の中で行われました。

各賞を受賞された書店員さんが全国各地から22名お越しくださり、作家のみなさまもお忙しい中14名もご出席くださいまして、今年も大変華やかな式となりました。

受賞されたみなさまにはトロフィーと副賞をお渡しし、ステージで一言ずつお話いただきました。

熱い思いのこもったスピーチをお聞きすると、1冊1冊大切に、そして情熱を持って読者の方に届けてくださっていることが伝わってきて、私たちも改めて感謝の気持ちでいっぱいになります。

奈良蔦屋書店さんは受賞されたディスプレイを持って来てくださり、手の込んだ作品に歓声が上がります。

副賞のジークレーは作家さんご本人から手渡していただきました! 

 

最後に全員で記念撮影!

 


↓↓続いて、授賞式後のパーティーの様子をご紹介します。

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ブロンズ新社の「平和をかんがえる絵本」

ブロンズ新社では、平和、戦争をテーマにした絵本をシリーズとして刊行してきました。日本だけでなく、イランやウクライナ、台湾、ベルギーで出版された絵本の翻訳版も刊行しています。国や地域が違っても、平和を願う想いは同じです。絵本が、平和について考えるきっかけや、親子で話し合うヒントになればと思います。

 

イラン発の、戦火を生きる21世紀の子どもたちの物語

『きみは、ぼうけんか』

シャフルザード・シャフルジェルディー 文
ガザル・ファトッラヒー 絵
愛甲恵子 訳
2024年2月刊行

この作品は、戦争、難民をテーマにイランの作家によって2019年に描かれました。
戦争によって親も家も奪われた主人公の幼い兄妹は、難民キャンプを目指し、過酷な旅にでます。この旅は「ぼうけん」で、ぼくたちは「ぼうけんか」なのだと、お兄ちゃんは想像の物語をつくって妹を励まし、苦しく厳しい道のりを歩きつづけます。

二人の姿は、過酷な状況であっても、想像力や希望を信じる力、そして遊び心をもつことで困難を乗り越えられるのだと、勇気を与えてくれます。

また、本書は2021年ブラチスラバ世界絵本原画展にて「金牌」を受賞しました。現在、世界6言語に翻訳出版されています。(2024年6月時点)

著者のシャフルザード・シャフルジェルディーさん、ガザル・ファトッラヒーさん、愛甲恵子さんより、読者の皆さまへのメッセージをお預かりしました。
こちらのURLよりぜひご覧ください。

 

ウクライナの作家が子どもたちに向けて描いた平和と戦争の絵本

『戦争が町にやってくる』

ロマナ・ロマニーシン、アンドリー・レシヴ 作
金原瑞人
2022年6月刊

ウクライナの著者、ロマナとアンドリーは、2014年に起きたロシアのクリミア侵攻とウクライナ東部の戦争を体験し、深いショックを受けました。この国で何が起こっているのか、「戦争」とは何か、子どもたちにシンプルな物語で伝え、親子で話し合うきっかけになるような本を作ろうと、2015年に本書を刊行しました。

物語の舞台は、美しい町・ロンド。人々は、花を育て、鳥や草木に話しかけながら楽しく暮らしていました。ところが、ある日とつぜん「戦争」がやってきます。町を愛するダーンカ、ファビヤン、ジールカの3人は、町の人々と団結してロンドを暗闇から救い出そうとします。

戦争が終わっても、傷は残り、変わってしまった町や人は元には戻らない―

平和とは何か、戦争とはどういうことかを、まっすぐに伝えてくれる絵本です。
現在は世界25言語に翻訳出版され、世界中の子どもたちのもとに届けられています。(※2024年3月時点)

2023年9月に、戦下のウクライナから著者のロマナとアンドリーが来日し、全国の書店員さんに向けたトークや、東京・調布市桐朋小学校を訪問し、特別授業を行いました。
そのときの様子をブログで紹介していますので、こちらよりご覧ください。

 

沖縄の小学生の平和の詩から生まれた絵本

『へいわってすてきだね』

安里有生 詩
長谷川義史
2014年6月刊

2013年、当時小学1年生だった安里有生(あさとゆうき)くんが、沖縄全戦没者追悼式で自作の詩を朗読する姿が報道され、全国で大きな反響を呼びました。その詩に感銘を受けた絵本作家の長谷川義史さんが、与那国島の安里くんを訪ね、島を取材し魂を込めて描きあげた絵本。
今年2024年、刊行10年を迎えました。

“これからも ずっと へいわがつづくように
ぼくも ぼくのできることから がんばるよ“
(一部抜粋)

安里くんの素直で純粋な言葉は、当たり前の日常、平和の尊さに気づかせてくれます。

 

シンプルな言葉と絵で、平和と戦争の事実を対比させた

『へいわとせんそう』

たにかわしゅんたろう 文
Noritake 絵
2019年3月刊

「へいわ」と「せんそう」の異なるふたつのシチュエーションを見開きで対比させ、簡潔な言葉とシンプルで力強い線画で構成した絵本。

シンプルな言葉と絵が鮮烈な印象となって迫り、平和と戦争の本質について考えさせられます。

文を担当した、詩人の谷川俊太郎さんは、戦時下に生まれ育ち、戦争について常に考えてきたと言います。

“せんそうの原因は かんたんではありません。
わたしたちは せんそうになると
敵と味方 良い方悪い方にわけようとしますが、
それもかんたんにわりきれないことが多い。
むしろ敵も味方も 勝った方も負けた方も
おなじ人類 とかんがえるほうが
未来にむけてひらいていると思います。”
谷川俊太郎

 

台湾から届いた平和への祈り

『おなじ月をみて』

ジミー・リャオ 作
天野健太郎
2018年10月刊

台湾の国民的絵本作家、ジミー・リャオさんが、作家生活20年を機に描き下ろし、自身でも傑作と呼ぶ一冊。戦争と平和、悲しみと喜び、すべては同じ空の下で起きていることが淡々と描かれます。傷ついた動物たちを手当する少年ハンハンの優しさは、やがて恐れに立ち向かう力へと変容していきます。
絶え間なくくりかえされる暴力、戦争……そんな状況下で、世界と向き合う勇気を伝えようとした作品です。

台湾のWebサイト「親子天下」で、ジミー・リャオさんが本書制作について語ったインタビュー記事が公開されています。翻訳版はこちらよりご覧いただけますので、ぜひ。

 

ベルギーの作家が描いた反戦絵本

『かあさんは、どこ?』

クロード・K・デュボワ 作
落合恵子
2013年2月刊

戦争から遠いはずのまちに、とつぜん鳴り響く砲撃。恐ろしい音がどんどん大きくなって、近づいてくる。家は、めちゃくちゃに壊され、家族はだれひとりいない。

「かあさんは どこ? みんなは?」
守ってくれる大人はなく、知らないひとのなかにその子はたったひとり。
はしって、はしって、はしりつづけて……

愛に満ちたほのぼのした作風のベルギーの作家、クロード・K・デュボワさんが、「戦争と子ども」をテーマに本書を描くには、少しの勇気と長い時間が必要だったと言います。背景には、第二次世界大戦中、親と離ればなれになって子どもだけで数年を過ごした著者自身の母親の体験がありました。日常生活をとつぜん破壊する戦争やテロ、自然災害は、子どもたちを否応なく巻き込みます。
過酷な状況下でも、希望を見失わずにいたいという優しく強いメッセージが込められています。

 


 

戦争は遠い昔の出来事でも、遠い異世界の出来事でもありません。いま、ここに生きているわたしたちの延長線上に起きている現実なのだということを、改めて考えていきたいと思います。

#ブロンズ新社の平和をかんがえる絵本