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『きみは、ぼうけんか』2月16日発売 ―作者から日本の読者の皆さんへメッセージ

2月に、イラン発の平和を考える絵本を刊行します。

戦火のもと、慣れ親しんだ家を追われ逃避行の旅にでた幼い兄と妹。お兄ちゃんが語る「ぼうけんか」のおはなしは、ときにふくれっつらしたり、泣きべそをかく妹を励まし続けます。
想像すること、未来に希望を持ち続けること、その大切さを教えてくれる作品です。

作者の方々から日本の読者の皆さんへのメッセージを預かりましたので、ご紹介します。

 

あらすじ

わたしとおにいちゃんは、戦火をのがれて「ぼうけん」の旅にでた。
「本にはね、どんな風や雨のなかでも、ぼうけんかはあるきつづけます、ってかいてあるよ」。ぼうしと1冊の本を手に、おさない兄妹は破壊された家から、「ぼうけんかのまち」をめざし旅立ちます。
おにいちゃんの言葉にささえられ、たどりついたのは......。

 
著者紹介

シャフルザード・シャフルジェルディー(文)
1986年生まれ。作家。幼いころから文学に熱中し、テヘランのシャヒード・ベヘシュティー大学で児童文学とヤングアダルト文学を専攻し修士号を取得。大学卒業後、数多くの作品を執筆している。ガザル・ファトッラヒーとの共著の今作で、2021年ブラチスラバ世界絵本原画展で金牌を受賞。

▽日本の子どもたちへメッセージ

こんにちは。『きみは、ぼうけんか』の作者のシャフルザード・シャフルジェルディーです。この本が日本語で翻訳され、日本の子どもたちが読むことができるようになり、とても嬉しく思っています。

この本は、旅に出る兄と妹の物語です。その旅は、けっして楽なものではありません。でも、ふたりは直面する困難を、愛と想像力と遊び心でのりこえていきます。ふたりは希望、恐怖、勇気、絶望といった、さまざまな感情を経験します。このふたりの小さな冒険家のことをより深く知ってもらいたいです。また、この本を読んでどんなことを感じ、考えたのか、ぜひわたしに教えていただけたら嬉しいです。

 

ガザル・ファトッラヒー(絵)
1989年生まれ。ビジュアル・アーティスト、イラストレーター。イラン・イラストレーターズ・ソサエティとイラン児童図書評議会の会員。テヘラン芸術大学グラフィックデザインの学士号を取得。2013年に初の絵本を出版して以来、15冊以上の絵本を手がけ、国内外の数々のブックフェアで評価される。常に新しい芸術言語の探求に意欲的で、伝統的な技法とデジタル効果を組みあわせたイラストが特徴。イラン在住。

▽日本の子どもたちへメッセージ

youtu.be

こんにちは。『きみは、ぼうけんか』の絵を描いたガザル・ファトッラヒーです。

この本を日本の子どもたちのもとに届けられて、とても嬉しいです。

わたしはいつも、絵を通して語っています。絵は翻訳の必要がなく、子どもから大人まですべての世界のひとが理解することができます。

この本は、ふたりの小さな冒険家についてのおはなしです。ふたりは家を追われ、行く先々でさまざまなできごとに見舞われます。でも、最後に「冒険家の街」にたどりつくことができました。

この本はわたしと文の著者との1年間の努力の結果です。わたしたちはこの本でふたつのストーリーを語ろうと試みました。ひとつは文章で、もうひとつはわたしの絵で、です。そのふたつのストーリーの違いが、読者の興味をひきつけるのだと思います。この本がうまくいったのは、そこに理由があると考えています。

絵は、黒いペンを使って描きました。ふたりの冒険家の服をのぞいて、すべてグレーで描いています。物語の後半に進むにつれ、色がだんだん増えていき、最後のページで色があふれます。

このおはなしを読んで、みなさんがふたりと仲良しになってくれたら嬉しいです。

 

愛甲恵子(訳)

翻訳家。東京外国語大学大学院修士課程修了後、10カ月のイラン留学を経て、2004年より美術家フジタユメカとともにサラーム・サラームというユニット名で、イランの絵本やイラストレーターを紹介する展覧会などを開催している。再話に『アリババと40人のとうぞく』(絵・ナルゲス・モハンマディ/ほるぷ出版『2ひきのジャッカル』(絵・アリレザ・ゴルドゥズィヤン/玉川大学出版部)、訳書に『ボクサー』(作・ハサン・ムーサヴィー/トップスタジオHR)『いろたち』(作・アッバス・キアロスタミ/カノア)などがある。

▽日本の子どもたちへメッセージ

めちゃくちゃに破壊された部屋の中で、お兄ちゃんは妹に、「ぼうけんかになりたくない?」とやさしく語りかけます。なんて力強い言葉だろう、と思います。住み慣れた家から妹を連れだし、一緒に遠くへ逃げるなんて、並たいていのことではありません。でもそんなすごいことを、お兄ちゃんはやってのけます。本と物語に支えられて。

お兄ちゃんが持つこの強さは、作者であるシャフルジェルディーさんとファトッラヒーさんの強さです。この絵本を読むと、物語や想像力が希望につながるということを、おふたりが心から信じていることがわかります。わたしはそのことに、とても励まされました。

物語に支えられた幼い兄妹の物語が、また別の誰かの心の支えになることを願っています。

 

編集担当より

ずっと、涙をこらえながら編集作業をしていたように思います。
いま、この瞬間に、この絵本の兄妹と同じように、命の危険にさらされ、泣いている子どもたちがいる。やりきれない気持ちでいっぱいでした。

戦争は遠い昔のできごとでもなく、遠い異世界のできごとでもない。いま、ここに生きているわたしたちの、延長線上で起きている現実です。

自分と似たような背かっこうの子どもたちが、衣食住を奪われ生死の境目に立たされている、そんな過酷な現実を自分の身に寄せて考えてほしい、そのきっかけとなる絵本になってくれたら、と願っています。

 

全国の書店員さんから続々と感想が寄せられています!

”子どもたちの強さ、たくましさに、希望の光が差しこんでくるようでした。”
啓林堂書店 郡山店 加川洋子さん

”お兄ちゃんの、妹を想う気持ちに涙がでました。”
六本松蔦屋書店 加藤美奈子さん

”異国でも、戦争のさなかでも、大切なことは同じ。”
丸善髙島屋大阪店 松本純子さん

”いろいろな視点で、家族や友人と話ができる本。”
でこぼこ書店 富井弥さん

”どんな国の子にも、こんな体験はしてほしくない。”
こどもの本のみせ ともだち 湯阪美智子さん

”子どもも大人も読み継いでいくべき大切な一冊。”
メトロ書店 神戸御影店 三柳知子さん

 

書誌情報

『きみは、ぼうけんか』
シャフルザード・シャフルジェルディー 文
ガザル・ファトッラヒー 絵
愛甲恵子 訳
定価 1,540円(本体1,400円+税)
260×200mm 32P
https://www.bronze.co.jp/books/9784893097286/

 

ブロンズ新社の平和をかんがえる絵本シリーズ

戦争を体験したウクライナの作家が描いた
『戦争が町にやってくる』
ロマナ・ロマニーシン、アンドリー・レシヴ 作/金原瑞人

https://www.bronze.co.jp/books/9784893097095/

 

シンプルな言葉と絵で、平和と戦争の事実を対比させた
『へいわとせんそう』
たにかわしゅんたろう 文/Noritake
https://www.bronze.co.jp/books/post-176/

 

台湾の国民的絵本作家が「恐れ」をテーマに描いた
『おなじ月をみて』
ジミー・リャオ 作/天野健太郎
https://www.bronze.co.jp/books/post-171/

 

沖縄の小学1年生の平和の詩から生まれた
『へいわってすてきだね』
安里有生 詩/長谷川義史
https://www.bronze.co.jp/books/post-95/

 

ベルギーの作家が描いた反戦絵本
『かあさんは どこ?』
クロード・K・デュボワ 作/落合恵子
https://www.bronze.co.jp/books/post-71/