長谷川さんは、『あめだま』を翻訳されていかがでしたか?
長谷川 翻訳は他の作品でも何冊かやらせていただいているのですが、
自分の勝手な表現や言葉は、なるべく使わないよう注意しています。
関西弁ではありますが、余計な表現はしないよう、
僕なりに気をつかって言葉を探しました。
関西弁は、じつは活字にすると、標準語に近い言葉なんですよね。
長谷川 そうなんですよね。だから関西じゃない方がイメージする
関西弁というのは、ふだん僕たちはあまり使っていなくて、
字にしたら(標準語と)ほとんど一緒です。イントネーションが違うだけで、
関西弁に聞こえたり聞こえなかったりするので、
わざとらしい関西弁は使わないようにしているつもりです。
とくに『あめだま』は現代が舞台なので、今っぽさを表現すると、
(標準語と)ほとんど変わらないですよね。
長谷川 『天女銭湯』は、僕にとってペク・ヒナさんの絵本の
初めての翻訳でしたので、いくつかの訳文に対して、
「この言葉は絵を見たらわかりますから、韓国語でも使って
いないので、日本語でもその言葉は使わないでください」
と的確な答えが返ってきました。そのとき、ビジュアルにも言葉にも、
隙なくこだわってつくられている絵本なのだなと感じました。
ペク・ヒナさんのお父様が日本語をよくご存じでしたので、
そういったご指摘をいただきました。一方で、
「大阪弁にしたことで、原作よりあたたかなよい効果が出た」
と言われたときは、すごく嬉しかったですね。
長谷川 ぼくは韓国語がわからないので、お父さんがていねいに
日本語をチェックしてくれたことは、本当にありがたかったです。
この本の最後のせりふ「ぼくと いっしょに あそべへん?」は
名訳ですよね ! この訳がきたときに、もう、感動しました。
長谷川 「ぼくと いっしょに あそぼ」とは言えない子なんですよね。
ペク・ヒナさんが描きたかった内気な男の子は、
こんなふうに、断られてもいいような聞き方をする。
保険をかけているんですね。
僕には3人の男の子がいるのですが、一番下の子がこのタイプなんです。
たから、こういう言い方をするやろなと思いました。
(つづく)