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絵本やイベント情報についてご紹介します。

ペク・ヒナ×長谷川義史トークイベントレポート①

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韓国と日本を代表する絵本作家のコラボ『あめだま』の発刊を記念して、

ペク・ヒナさんと長谷川義史さんのトークが実現しました。

ペク・ヒナさんによる韓国語の読み聞かせ、

つづいて長谷川義史さんによる日本語の読み聞かせで、

トークがスタートしました。

 

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  ペク・ヒナさんは、実際に撮影した人形を持って来日してくれました。

人形絵本の作家として、人形づくりにはじまって、セット、洋服と小物、照明、

そして撮影までを、ぜんぶひとりでつくられるという、世界でも特殊な絵本づくりですね。どのようにして、制作されているのですか。

 

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ペク・ヒナ これはダミーブックとよばれるもので、最初に、

全体のストーリーを、ほぼファイナル(完本)に近いかたちでつくります。

可能な限り最終形で表現したいスタイルや雰囲気を

ダミーブックにこめます。長い制作期間のなかで、

道を外さないための地図のような役割を果たしてくれます。

 

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この本をつくっている当時は、息子が小学2年生。

彼は私と似て、人とコミュニケーションをとるのが苦手で、

友だちをつくるのが得意ではありませんでした。

母親として子どもに、生活面や教育環境はサポートできても、

友だちづくりまで助けることはできません。

そのことに、私はとても胸を痛めていました。

そんな母親としての想いが、『あめだま』にはつまっています。

ですので、主人公のドンドンが着ている服も、

当時息子が着ていた服と同じデザインです。

当初、この少年をデザインしたときは、

もっと目が大きな子どもだったのですが、

感情表現が苦手な子ですので、性格に合わせて

目も口も小さくなっていって、

耳も髪でかくしているようなキャラクターになりました。

 

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父親のめがねを白く曇らせたのも、

父親も少年と同じく、コミュニケーションが得意でないことを

表したかったからです。

だからは、彼の目が見られないようにしました。

 


絵本『あめだま』メイキングムービー

 

ペク・ヒナ 人形を置いて、小道具をそろえ、照明を当て、

さまざまなテストショットを何枚も何枚も撮影します。

作業は大変ですが、完成が近づくにつれ、

まるでそのシーンが生きているように見えてくるのは、

本当に楽しいものです。

 

 

  『あめだま』1冊をつくるのに、どれくらいかかりましたか?

 

ペク・ヒナ  このお話は、昔考えたストーリーをもとにして

絵本につくり直しているので、そのストーリーがあったことを

前提として考えると、完成(入稿)まで10カ月かかりました。

 

  これだけの制作を10カ月で! すごい集中力ですね。

 

ペク・ヒナ 私はもともと短期間で全力疾走して早く終わらせる

タイプなのですが、子どもを2人育てていたので、

ラソン選手のペースで作業をせざるをえませんでした。

作業の合間に子育てという現実に引き戻されて、

また作業に戻るという生活だったので、大変でした。

 

  一番時間がかかったのは、どのシーンですか?

 

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ペク・ヒナ 落ち葉のシーンには、こだわりました。

落ち葉はパンチを使って1枚1枚手作業でつくっていますし、

秋のこもれびを表現するために、照明にこだわって制作しました。

このシーンは人口照明を使って、カーテンを締め切ったなかで

撮影しているため、何度でも撮り直しがききましたが、

 

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こちらのシーンは、どうしても自然光で撮りたかったので、

朝の光が差しこむ瞬間に撮影しています。

太陽が動くので、早く作業しなければならず、

撮影するのに苦労しました。

 

 

(続く)