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ヨシタケさん新刊絵本制作ブログ:その1 寄藤文平さんとヨシタケさん

ヨシタケさん新刊絵本制作ブログ:その1

毎日あつい日がつづきますね。

各々が好きな時期に夏休みをとるブロンズ新社では、
旅から帰ってきた人や、これから旅立つ人がちらほら。
ふだんと変わらず働いてはいるのですが、
どことなくバカンスムードが漂う社内は、悪くない感じです。
あつい時こそ、日常から離れて、
ぼんやりしなくてはいけませんね。


さて、今日は10月の新刊絵本の制作裏についてです。
10月の新刊は、子どもから大人まで、
絶大な人気を誇る、ヨシタケシンスケさん。


今回の本は、スキンシップをテーマにした幼年向け絵本です。
「ヨシタケ至上、いちばんシンプルで読みやすい」を合言葉に、
たのしくて気持ちのいい絵本を目指して、現在絶賛制作中です。


先日、この絵本の装丁・デザインを担当して下さる、
寄藤文平さんの事務所へ、
伺ってきました。


寄藤さんとヨシタケさん、同い年で、作家、
イラストレーターと、共通点の多いおふたり。


絵本の意図や、イメージなどをお伝えし、
デザインや色のイメージをふくらませていきます。
装丁やデザインは、絵本の顔を決める大事な大事な要素ですので、
名医に駆け込む患者のごとく、こちらの思いを切々と語ります。
千冊近い本の装丁を手がけ、ブックデザイナーとしても名高い
寄藤さんは、「うん、うん」と、穏やかに優しく、
患者(編集者)の訴えをきいて下さる方でした。


個人的な印象ですが、
エディトリアルデザイナーや、装丁家の方は、
どことなく、カウンセラー感、主治医っぽさがある方が
多いような気がします。



ヨシタケさんの絵本の最終ラフ。
鉛筆の下書きスケッチならではの、やわらかく、やさしいタッチ。


どうですか! かわいいでしょう!
(これだけじゃ、よくわかりませんかね)。
今回の絵本は、読者の触感に訴えかける、
生理的な気もちよさが満載の絵本。読むたびに癒されます。
編集者の役得で、本になる前の下書きを、
4才のわが子に読み聞かせて遊びましたが、
きゃっころ、きゃっころ、笑いころげる子どもとともに、
まあ、なんとも、至福のときが過ごせます。



子どもをこの生地に見立て、スキンシップしまくりで読み聞かせ。


打ち合わせが終わると、
寄藤さんの最近のお仕事の原画を見せて下さいました。
福島県の総合情報誌「ふくしままっぷ」
巨大な一枚絵の原画。



大きな紙にシャープペンシルで、直接描き込まれた原寸の緻密な原画。
・・・ため息。


下絵に色がついたもの。
完成版は、福島県のホームページでダウンロードできます。


眺めても眺めても見飽きないつくりは、
マニアックな集中力を誇る子どもたちには、たまらないでしょうね。
私もじいっと読み込んでしまいました。
英語バージョンもあり、ふたつ並べて対訳で見ていくのも愉快です。


ヨシタケさんと寄藤さんの会話は尽きず、
ふたりでとっても楽しそうに、おしゃべりをしつづけています。
耳をそばだてているだけで、
「ああ、これ、あと数時間は余裕でいける会話ね」と、いう感じ。
面白い雑談って、ほんとうに
永遠に話し続けていられるような気持ちになりますよね。


わたしがいちばん面白かったのは、 AIの話。
8割の正答率で小説がベストセラーになるかならないかがわかる
AIの話を書いて話題騒然だという
ベストセラーコード』の話などから端を発して。


「つまり、8割当たるってことは、
そこまでのメジャーなベストセラーをつくるのはそんなに難しくないわけだけど、
それを9割、10割まで上げていく時には、きっと波のゆらぎとか、
天候とかいろんな要素が必要になってくるってことですよ!」と、盛り上がるおふたり。
で、そこにアルゴリズムなどでは御しきれない、
人間の奇妙な行動が関わってくるんでしょうね、と。


わたしは未だに FAXのしくみとかがよくわからずに、
「すごいよねぇ」とか思っている古人間なので、
人智を超えた AIなどには、本能的な恐怖を感じるおびえ系なのですが、
寄藤さんの
「まあ、これからぼくたち人間は、 人工知能たちが理解しきれない不可解な行動をする、
謎の因子、になっていくんじゃないかな」という言葉に爆笑してしまって、
そうか! これからわたしは、謎因子として生きてゆけばいいのだ、と、
なんだか肩の力が抜けたのでした。のんきな感想ではありますが。


満足ゆくまで楽しいお話をした帰り道、ヨシタケさんが、
「すごい人や憧れの人と、こんな風におはなしできる時間が、
この仕事をしている人間にとってのいちばんのご褒美ですよね」と、
しみじみ話されていて、ほんとにそうだな、と、思いました。


面白い話をしたり、きいたりしている人の表情は、
わかりやすくきらめいて、目に光が宿りますね。
面白い雑談はすばらしい。

なんだかよくわからない内容になってしまいましたが、
これはこれ、それはそれで、
みなさま、寄藤文平さんがデザインを手がける、
ヨシタケシンスケさんの新刊絵本『こねてのばして』、
どうぞたのしみにお待ちください!


(編集部・沖本)