落合恵子さんによる、翻訳絵本『かあさんは どこ?』。
まずは、あらすじをご紹介しますね。
*ある日とつぜん、子どもがひとりぼっちになったら……*
戦争から遠いはずのまちに、突然の砲撃。
恐ろしい音がどんどん大きくなって、近づいてくる。
家は、めちゃくちゃに壊され、家族はだれひとりいない。
「かあさんは どこ? みんなは?」守ってくれる大人はなく、
知らないひとのなかにその子はひとり。
はしって、はしって、はしりつづけて……
オリジナルのタイトルは、【Akim court】。
【Akim】は男の子につけられる名前で、【court】には、「はしる」という意味があります。
砲撃にあい、家まで必死にはしる。 家族を探すために、はしる。 逃げるために、はしる。
この物語の中では、主人公がひたすらにはしっている光景がとても印象的です。
『かあさんは どこ?』は、ベルギー出身、クロード・K・デュボワさんによる作品です。
絵本好きの方ならきっとご存知だと思いますが、『だいすきっていいたくて』や、
『ねぇ、わたしのことすき?』(カール・ノラック/作、ほるぷ出版)などの、
ハムスター・ロラを描いたシリーズの絵を描かれた方です。
この作品は、デュボワさんのお母さんが、第2次大戦下に遭遇した体験をもとに描かれました。
「戦争と子ども」をテーマにしていますが、
災害や暴力、貧困などの、巨大な社会の理不尽さも考えずにはいられません。
また、訳者の落合恵子さんは、物語の主人公が、
「東日本大震災の被災地で出会った子どもたちと重なった」と、語っています。
作者と訳者、ふたりの思いが1冊の絵本を通してつながったのですね。
個人的な感想を書かせていただくと、
「もしかしたら、“その子”は自分かもしれない」、
そう思うと、いてもたってもいられない気もちになります。
「平和」や「愛」って壮大なテーマに聞こえるかもしれませんが、
なによりもまず、身近にいる人を大切にしたいな、と思える作品です。
今夜は、自分の家族に電話をして、いつもは照れくさくて言えないけど、
「ありがとう」の気もちを伝えてみようかな。
お手にとっていただけたら嬉しいです。
(広報・まつや)