ブロンズ新社公式ブログ

絵本やイベント情報についてご紹介します。

ブロンズ新社の「平和をかんがえる絵本」

ブロンズ新社では、平和、戦争をテーマにした絵本をシリーズとして刊行してきました。日本だけでなく、イランやウクライナ、台湾、ベルギーで出版された絵本の翻訳版も刊行しています。国や地域が違っても、平和を願う想いは同じです。絵本が、平和について考えるきっかけや、親子で話し合うヒントになればと思います。

 

イラン発の、戦火を生きる21世紀の子どもたちの物語

『きみは、ぼうけんか』

シャフルザード・シャフルジェルディー 文
ガザル・ファトッラヒー 絵
愛甲恵子 訳
2024年2月刊行

この作品は、戦争、難民をテーマにイランの作家によって2019年に描かれました。
戦争によって親も家も奪われた主人公の幼い兄妹は、難民キャンプを目指し、過酷な旅にでます。この旅は「ぼうけん」で、ぼくたちは「ぼうけんか」なのだと、お兄ちゃんは想像の物語をつくって妹を励まし、苦しく厳しい道のりを歩きつづけます。

二人の姿は、過酷な状況であっても、想像力や希望を信じる力、そして遊び心をもつことで困難を乗り越えられるのだと、勇気を与えてくれます。

また、本書は2021年ブラチスラバ世界絵本原画展にて「金牌」を受賞しました。現在、世界6言語に翻訳出版されています。(2024年6月時点)

著者のシャフルザード・シャフルジェルディーさん、ガザル・ファトッラヒーさん、愛甲恵子さんより、読者の皆さまへのメッセージをお預かりしました。
こちらのURLよりぜひご覧ください。

 

ウクライナの作家が子どもたちに向けて描いた平和と戦争の絵本

『戦争が町にやってくる』

ロマナ・ロマニーシン、アンドリー・レシヴ 作
金原瑞人
2022年6月刊

ウクライナの著者、ロマナとアンドリーは、2014年に起きたロシアのクリミア侵攻とウクライナ東部の戦争を体験し、深いショックを受けました。この国で何が起こっているのか、「戦争」とは何か、子どもたちにシンプルな物語で伝え、親子で話し合うきっかけになるような本を作ろうと、2015年に本書を刊行しました。

物語の舞台は、美しい町・ロンド。人々は、花を育て、鳥や草木に話しかけながら楽しく暮らしていました。ところが、ある日とつぜん「戦争」がやってきます。町を愛するダーンカ、ファビヤン、ジールカの3人は、町の人々と団結してロンドを暗闇から救い出そうとします。

戦争が終わっても、傷は残り、変わってしまった町や人は元には戻らない―

平和とは何か、戦争とはどういうことかを、まっすぐに伝えてくれる絵本です。
現在は世界25言語に翻訳出版され、世界中の子どもたちのもとに届けられています。(※2024年3月時点)

2023年9月に、戦下のウクライナから著者のロマナとアンドリーが来日し、全国の書店員さんに向けたトークや、東京・調布市桐朋小学校を訪問し、特別授業を行いました。
そのときの様子をブログで紹介していますので、こちらよりご覧ください。

 

沖縄の小学生の平和の詩から生まれた絵本

『へいわってすてきだね』

安里有生 詩
長谷川義史
2014年6月刊

2013年、当時小学1年生だった安里有生(あさとゆうき)くんが、沖縄全戦没者追悼式で自作の詩を朗読する姿が報道され、全国で大きな反響を呼びました。その詩に感銘を受けた絵本作家の長谷川義史さんが、与那国島の安里くんを訪ね、島を取材し魂を込めて描きあげた絵本。
今年2024年、刊行10年を迎えました。

“これからも ずっと へいわがつづくように
ぼくも ぼくのできることから がんばるよ“
(一部抜粋)

安里くんの素直で純粋な言葉は、当たり前の日常、平和の尊さに気づかせてくれます。

 

シンプルな言葉と絵で、平和と戦争の事実を対比させた

『へいわとせんそう』

たにかわしゅんたろう 文
Noritake 絵
2019年3月刊

「へいわ」と「せんそう」の異なるふたつのシチュエーションを見開きで対比させ、簡潔な言葉とシンプルで力強い線画で構成した絵本。

シンプルな言葉と絵が鮮烈な印象となって迫り、平和と戦争の本質について考えさせられます。

文を担当した、詩人の谷川俊太郎さんは、戦時下に生まれ育ち、戦争について常に考えてきたと言います。

“せんそうの原因は かんたんではありません。
わたしたちは せんそうになると
敵と味方 良い方悪い方にわけようとしますが、
それもかんたんにわりきれないことが多い。
むしろ敵も味方も 勝った方も負けた方も
おなじ人類 とかんがえるほうが
未来にむけてひらいていると思います。”
谷川俊太郎

 

台湾から届いた平和への祈り

『おなじ月をみて』

ジミー・リャオ 作
天野健太郎
2018年10月刊

台湾の国民的絵本作家、ジミー・リャオさんが、作家生活20年を機に描き下ろし、自身でも傑作と呼ぶ一冊。戦争と平和、悲しみと喜び、すべては同じ空の下で起きていることが淡々と描かれます。傷ついた動物たちを手当する少年ハンハンの優しさは、やがて恐れに立ち向かう力へと変容していきます。
絶え間なくくりかえされる暴力、戦争……そんな状況下で、世界と向き合う勇気を伝えようとした作品です。

台湾のWebサイト「親子天下」で、ジミー・リャオさんが本書制作について語ったインタビュー記事が公開されています。翻訳版はこちらよりご覧いただけますので、ぜひ。

 

ベルギーの作家が描いた反戦絵本

『かあさんは、どこ?』

クロード・K・デュボワ 作
落合恵子
2013年2月刊

戦争から遠いはずのまちに、とつぜん鳴り響く砲撃。恐ろしい音がどんどん大きくなって、近づいてくる。家は、めちゃくちゃに壊され、家族はだれひとりいない。

「かあさんは どこ? みんなは?」
守ってくれる大人はなく、知らないひとのなかにその子はたったひとり。
はしって、はしって、はしりつづけて……

愛に満ちたほのぼのした作風のベルギーの作家、クロード・K・デュボワさんが、「戦争と子ども」をテーマに本書を描くには、少しの勇気と長い時間が必要だったと言います。背景には、第二次世界大戦中、親と離ればなれになって子どもだけで数年を過ごした著者自身の母親の体験がありました。日常生活をとつぜん破壊する戦争やテロ、自然災害は、子どもたちを否応なく巻き込みます。
過酷な状況下でも、希望を見失わずにいたいという優しく強いメッセージが込められています。

 


 

戦争は遠い昔の出来事でも、遠い異世界の出来事でもありません。いま、ここに生きているわたしたちの延長線上に起きている現実なのだということを、改めて考えていきたいと思います。

#ブロンズ新社の平和をかんがえる絵本