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サラーム! こんにちは。
イラン発の平和を考える絵本『きみは、ぼうけんか』(シャフルザード・シャフルジェルディー・文/ガザル・ファトッラヒー・絵)の翻訳を担当しました愛甲恵子です。
わたしはこの5月、イランを訪れました。イランといってもほとんど首都テヘランにいたのですが、滞在中は、ブックフェアに通ったり、著者のおふたりに会ったり、出版社を訪ねたりしました。そのようすや、著者や編集者からうかがった、『きみは、ぼうけんか』誕生までの物語を、写真も交えながらみなさんにお伝えしたいと思います。
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テヘラン国際ブックフェア
テヘラン国際ブックフェアは、年1回のペースで10日間ほど開催される大規模なブックフェアです。今年で35回目。コロナ禍で中断したこともありましたが、その後ネットに連動する形も整え、リアルとネットで盛りあがるイベントになりました。国際ブックフェアというと、版権の取引などがメインだと思いますが、テヘランの場合は、ここ最近は特に「一般市民が国内の出版社の本を割引価格で買える機会」というイメージです。
著者のトークやサイン会、子どもたちのためのイベントが数多く企画され、食べ物の屋台もたくさん出て、今回も多くの人を集めていました。
大きいブースには何人も案内の人がいて、おすすめの本を紹介してくれたり、どんな質問にも答えてくれます。ふらふらとブースを巡っていたわたしは、「何歳の子どもにどんな本を買いたいのか」と何度も聞かれました。「自分のためなんですよ」と答えると、ちょっと驚いた顔をしたあと、ニコッと微笑を返して「それじゃあ、こんなのどうかしら?」といろいろな本を紹介してくれました。
『きみは、ぼうけんか』の原書版元であるTUTI出版のブースにも多くの人が訪れていました。
渉外担当の方に、本の売れ行きなど、ちょっとつっこんだことをうかがったのですが、インフレの影響で本の値段を上げなくてはならないのが大変だということでした。昨年に比べ絵本の値段は3倍にせざるを得ず、そのため、ブックフェアに人はたくさん来ているのに、高価な本は敬遠され、売り上げは思ったように伸びなかったのだとか。ブックフェア自体についても、国際情勢の影響があって、今年はほとんど外国の出版社が参加せず、残念だったと言っていました。
しかしこういった厳しい状況の中でも、並べられている新刊はこれまでと変わらず魅力的で、TUTIの絵本づくりが全くブレていないことが感じられました。日本を含む外国の優れた絵本の翻訳版も出しつづけており、「自分たちがよいと思う本を子どもたちに届ける」という、子どもの本の出版社としての揺るぎのない信念が感じられるラインナップに、こちらの方が勇気づけられました。
続いて、『きみは、ぼうけんか』の著者おふたりと編集者にお会いします!
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