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絵本『ケチャップマン』発売記念 鈴木のりたけさん特別インタビュー!<第3回>

★第3回★
当時の絵を見ると、喉が渇く!?

ーーこれまで絵本をつくってきて、過去の作品に手を加える、
  という作業ははじめてだったと思いますが、いかがでしたか?
のりたけ おもしろかったですね。
今見ると、当時の絵はかなり時間をかけて描いているのがわかります。
あと、アクリル絵の具の性質を知らなすぎたので、
見ていて喉が渇くような、からっからの絵ですよね。笑。


今は、その頃使っていなかった武器も導入しています。
●保湿パレット
絵の具がすぐに乾かないように、下にぬれたスポンジをしいたもの
●リターダー
水のかわりにこれで絵の具を溶くことで、乾きを遅くするもの。
グラデーションをつくるときに便利。


古い絵は、きれいなグラデーションを出すために、筆のタッチが細かくなっています。
少し描いて、色を混ぜて、またちょっと描いて、混ぜて…のくりかえしなので、
手間と時間が相当かかります。リターダーを使うと、中間色は筆でスッとなでるだけなので、
「昔の俺、がんばってたなー!」って思います。笑。


ーー復刊した『ケチャップマン』は、昔と今ののりたけさんが同居している作品ですね。
のりたけ 古い絵に紙を貼り足して描いたページもあります。
新旧の絵でいちばんわかりやすいのは、顔の描きかたですね。
描き足したところは左右のページで顔が微妙にちがっていたりします。


紙を貼り足して描かれた原画


ーー絵の具の発色や鮮やかさも、違うように見えます。
のりたけ 当時は、絵の具をすごく混ぜて描いていました。
発色がよい、パキパキっとした絵よりは、暗くて宗教画のような絵が好きだったので。


人の肌を描くのに、今は「ジョンブリアン」という色の絵の具を基本に、
陰影をつけるために茶色やオレンジを混ぜて使っています。
当時はいちから、白・赤・オレンジ・ピンク…などを使って、
フィルムケースのなかに「オリジナルの肌色」をつくっていました。
絵の具って、混ぜると発色が悪くなっていくので、(新旧の差は)特に肌色で出ているかな。


ーー絵を描きはじめたころ、画材は一式そろえたのですか?
のりたけ 絵の具は基本色だけを買いました。
印刷は、基本CMYK(青・赤・黄・黒)なので(※)、
緑をつくりたかったら、黄色と青を混ぜる、というように、
最低限その4色さえあれば、すべての色をつくれると思っていました。
だけど、そうやって描いていくと、彩度(色のあざやかさ)が落ちるというのが
ちょっとずつわかってきたので、いろんな色の絵の具を買い足していきましたね。
なので、当時の絵はものすごく彩度が低いんです。


※印刷のCMYKについて、ブロンズ新社のデザイナーが
わかりやすく解説しているページはコチラ → CLICK!!


ーー『しごとば①』のくすんだような色合いは、のりたけさんの色の特徴だと思っていました。
のりたけ あの頃もまだ色を混ぜて描いていたんだと思います。
今年の6月に『たべもんどう』と『ほんとはスイカ』(昼田弥子・文、高畠那生・絵)の合同原画展がありました

 

高畠さんの原画を見たときに、絵の具の発色そのままで描かれているので、
ものすごくきれいだな、と思いました。高畠さんに「発色すごいですね」と言ったら、
「絵の具、混ぜてないですからね!」と端的に言っていて、
僕の絵は、重厚感はあるけれど、ぱっと見の発色は全然ちがいますよね。
原画をならべて比べられる、いい機会でした。


3回目でようやく、取材中の写真をアップ。
お待たせしました!笑。
次回も、ますますディープです。
おたのしみに。(広報まつや)