ブロンズ新社公式ブログ

絵本やイベント情報についてご紹介します。

【発表】第8回ブロンズ新社書店大賞!

児童書を愛し、出版界を盛り上げてくださる書店さんを応援する賞、ブロンズ新社書店大賞。
今年もたくさんのご応募、ありがとうございました。
このたび第8回となる本賞について、下記のように選考させていただきましたので、発表いたします!


【パッション部門】
情熱をもって活動されている「人」や「グループ」にスポットをあて、表彰させていただく部門です。

 

 パッション賞
NPO法人 本の学校

 本の学校は、山陰の今井書店グループ創業120周年事業として、1995年、鳥取県米子市に設立。市民の読書推進や図書館づくりなどの運動と、今井書店・三代、今井兼文氏の「ドイツの書籍業学校に学ぶべき」という遺志を受け継いで実現された。本の学校の2階には、研修室、多目的ホール、談話室、子ども図書室、本の博物室、本の図書室がある。

 『「本」との出会いを創り、育む』を理念とし、地域を原点に「地域の人々の生涯読書の推進」、「出版界や図書館界のあるべき姿を問うシンポジウムやセミナー」、「出版業界人、書店人の研修講座」などに取り組んでいる。

2012年3月1日より、特定非営利活動法人となり、より中立的で横断的な活動を行っている。 

 

◆受賞のことば◆
米子発全国発信のこの活動に発足当初の25年前から参加してきましたが、ここまで継続できたのは、永井伸和初代理事長をはじめ先輩方の志の高さと、本や出版の未来に思いを寄せる全国の様々な皆さんのお力添えによるものです。この度の栄誉に感謝し、今後も取り組んでいかなければと大きな責任を感じています。
(前田昇さん)


この度は、素晴らしい賞をいただき誠にありがとうございます。これからも皆様のお力をお借りしてがんばってまいりたいと思います。
(五丁泰次郎さん)

 

 

リスペクト賞
情熱を持って活動されている書店員さんへの尊敬や感謝の気持ちを表彰する賞です。 

啓林堂書店 加川洋子さん 

◆受賞のことば◆

この度はすばらしい賞をありがとうございます。身に余る賞ですのでドキドキしています。児童書にたずさわる中、まわりの方々に支えられて、今日の自分があります。本当に感謝です。この賞をきっかけにまた新たな一歩をふみ出したいと思います。

 

【ラブレター部門】

小社から出版されている作品やその作家へのラブレターを募集した部門です。

【ラブレター賞】

多数ご応募いただきましたが、残念ながら該当者なし

 

 

【ディスプレイ部門】
◎グランプリ
フタバ図書 アルティアルパーク北棟店

◎特別賞
明林堂書店 南佐賀店
枚方蔦屋書店

◎入賞(9店舗)
未来屋書店 大垣店、ふたば書房つかしん店、アミーゴ書店 寝屋川店、明文堂書店 TSUTAYA KOMATSU、ブックポート203 栗平店、紀伊國屋書店 ららぽーと豊洲店、啓林堂書店 奈良店、長崎書店、天真堂書店 甲府国母店

 

グランプリ
フタバ図書 アルティアルパーク北棟店

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リンドバーグ』『アームストロング』『エジソン』のディスプレイ

◆受賞のことば◆
名誉ある賞をいただけて大変光栄です。ありがとうございます。この賞はディスプレイを作るきっかけと目的になってくださった奥田さんに捧げます。(本当です)
佐藤聖さん・谷川真理子さん)


 


特別賞
明林堂書店 南佐賀店

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エジソン』のディスプレイ

◆受賞のことば◆
今回は素晴しい賞をありがとうございました。書店のディスプレイから未来をつくる子どもたちにこれから夢を届けたいと思います。
(本間悠さん) 

 


枚方蔦屋書店

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『さくらもちのさくらこさん』のディスプレイ

◆受賞のことば◆
『さくらもちのさくらこさん』の新刊出版を盛り上げるべく、さくらの花びらで満開にしてみました。スタッフ全員で1枚1枚心を込めて花びらを制作し、装飾致しました。桜の下で「わあ!」という歓声をあげて写真を撮り、絵本を手に取ってくださるお客様もたくさんいらっしゃしました。さくらこさんにも喜んでいただけたでしょうか?笑 この度は、栄えある賞をいただき、ありがとうございました。
(中西美保さん・河本真由美さん)

 

 

入賞

未来屋書店 大垣店 

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『ころべばいいのに』のディスプレイ

 

 

ふたば書房つかしん店

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「だるまさん」シリーズのディスプレイ



アミーゴ書店 寝屋川店        

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『ころべばいいのに』のディスプレイ

 

 

明文堂書店 TSUTAYA KOMATSU

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エジソン』のディスプレイ

 

 

ブックポート203 栗平

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tupera tuperaフェアのディスプレイ

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あるくノブくん人形!



 

 紀伊國屋書店 ららぽーと豊洲

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ヨシタケさん発想絵本フェアディスプレイ

 

 

啓林堂書店 奈良店

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エジソン』のディスプレイ

 

 

長崎書店

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『うかいのうがい』のディスプレイ

 

 

天真堂書店 甲府国母店

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「だるまさん」シリーズ、「くまのがっこう」シリーズのディスプレイ

 

 

 

【ベストPOP部門】
読者の心をつかむキャッチコピーや、愛情たっぷりの手描きイラスト。
書店員さんのアイディアがいっぱいつまった、渾身のPOPを賞する部門です。

 

◎ベストPOP
大垣書店 イオンモールKYOTO店

◎POP
ふたば書房 大津西武店

アカデミアくまざわ書店 すみのどう店

紀伊國屋書店 笹塚店

未来屋書店 幕張新都心

三省堂書店 名古屋本店
旭屋書店 京阪守口店
くまざわ書店 営業推進部
【入賞】
木村書店、TSUTAYA サンリブきふね店、金沢ビーンズ 明文堂

 

 

 
ベストPOP
大垣書店 イオンモールKYOTO

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『ともだちしょうかいしようかい』のPOP

◆受賞のことば◆
この度は、まさかのベストPOP賞を頂きありがとうございます。京都在住のtupera tuperaさんの新刊を盛りあげたく、心をこめて製作しました。

又、この絵本の制作プロセスのDVDを店頭で流すにあたり、たくさんの工程と人の手を経て書店に届けられている事をお客様にお伝えしたいと、わかりやすくPOPにしてみました。

作家さん、編集者さんの絵本にかける思い、製版、印刷、断裁、製本の方の丁寧な仕事、それらをお客様にお伝えできる最前線にいる書店員として何ができるか、これからも精進してまいりたいと思います。
(岸朋子さん)

 

 


POP
ふたば書房 大津西武店

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エジソン』のPOP

◆受賞のことば◆
昨年に続き、選んで頂きありがとうございます。“読む映画”の監督になったつもりで制作したPOPです。このカチンコで主人公のネズミが動きだしてくれたらいいな…。小さな子供達から大人達まで夢中で読んでくれています。
(伊達早苗さん)

 

 


アカデミアくまざわ書店 すみのどう店

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『あめだま』のPOP

◆受賞のことば◆
この度は、素敵な賞を頂きありがとうございます。児童書の担当になりちょうど1年なのでとても感慨深いです。これからもお客様に楽しんでいただけるようなPOPを沢山作っていきたいと思います。
(石川映穂さん)

 

 

 紀伊國屋書店 笹塚店

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『さくらもちのさくらこさん』のPOP


◆受賞のことば◆
毎回楽しみながら作っています。この素敵な作品を知ってもらいたい!好きを伝えたい!そして手にとっていただくきっかけになれば…と、いろいろな想いを込めて手作りしたPOP達。そのPOPで賞をいただけたことが本当にうれしく、光栄です!ありがとうございます!
(野澤真由さん)

 

 

未来屋書店 幕張新都心

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『マルマくんかえるになる』のPOP

◆受賞のことば◆
この度はPOP賞に選んで頂き、ありがとうございます!とても光栄です。これからも「本当によい」と思った絵本のPOPを書き、絵本と人との出会いを増やす手助けができたらと思います。
(川向真由子さん)

 

 

三省堂書店 名古屋本店

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『やすみのひ』のPOP


◆受賞のことば◆
賞を頂きました『めいととだより』は、児童書のアルバイト2人で毎月ひーこら言いながらなんとか発行しています。偶然にも、御社の絵本を紹介している回を見て頂き、そしてこんな素敵な機会まで頂けて大変嬉しく思います。
(渡邉伽耶さん)

 

 

旭屋書店 京阪守口店

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『ともだちしょうかいしようかい』のPOP

◆受賞のことば◆
この度はPOP賞に選んで頂き、嬉しく思います。ありがとうございます。一人でも多くの方に絵本を手に取って頂けるようなPOPをこれからも作成していきたいです。
(横山祥子さん)

 

 

くまざわ書店 営業推進部

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『へいわとせんそう』のPOP

◆受賞のことば◆
心のこもった本がお客様に届くようにと取り組んでいたPOP作りを評価して頂けて、とてもうれしいです。ありがとうございます。
(原田優佳さん)

 

 

 

入賞

木村書店  

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『まいにちたのしい』のPOP

 

TSUTAYA サンリブきふね店

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『やすみのひ』のPOP


金沢ビーンズ 明文堂

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『あきのセーターをつくりに』のPOP

 

改めまして、受賞されたみなさまおめでとうございます!

来月の授賞式でお会いできるのを、スタッフ一同楽しみにしております。

第12回MOE絵本屋さん大賞・授賞式レポート

先日、第12回MOE絵本屋さん大賞授賞式が行われました。

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*今回の受賞作品

 

ブロンズ新社からは、

2位にヨシタケシンスケさんの『ころべばいいのに』、5位に谷川俊太郎さん文、Noritakeさん絵の『へいわとせんそう』が受賞しました。

ご投票いただいたみなさま、ありがとうございます!

 

受賞に際して、ヨシタケシンスケさんのインタビュー、谷川俊太郎さんとNoritakeさんの対談が、現在発売中のMOE2020年2月号に掲載中です。ぜひご覧ください。

 

受賞スピーチでは、

ヨシタケシンスケさんは、「きらいなひとっているよねー」という本をずっとつくりたいと思っていましたが、「嫌い」を子どもたちが読む絵本のテーマにするという難しさに迷っていたとき、編集者に「子どもたちに必要なテーマですよ」と後押しされてつくることができました、とおっしゃっていました。

 

Noritakeさんは、「平和と戦争」という重たいテーマですが、谷川さんと組むことで、「ちゃんと描こう、ちゃんと伝えよう」ということをずっと意識して、真摯に向き合うことができました。谷川さん、デザインの大島さん、編集者と4人で何度も話しあい、デリケートに進めてつくりあげました。ふだんは、人前には出ないのですが、今日は谷川さんがいらっしゃれないので、がんばって来ました、と話されました。

 

ベストレビュアー賞にえらばれた書店員さんです。

胸にしみる言葉をいただき、ありがとうございました!

  

『ころべばいいのに』について書いてくださった、喜久屋書店姫路店の中島友子さん

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心の中に誰もが持っているブラックな部屋。決して声に出してはいけない。けれど、ヨシタケさんにかかれば心もスッキリ!“アイツを嫌うパワーを使っていっぱい楽しいことを考えよう! そんな前向きな気持ちにさせる1冊です。

  

『へいわとせんそう』について書いてくださった、西沢書店大町店の水戸幸枝さん

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シンプルな絵でわかりやすい。シンプルな絵であるがゆえに、大人も一緒になって考える絵本。平和と戦争は紙一重。常に隣り合わせ。敵と味方は同じ。というところがハッとさせられる。お互いに同じ"命”なんだと。

   

どちらも難しいテーマ、重たいテーマでしたが、そこから、どうつくりあげるか、どう伝えるかへの真摯な姿勢をもち、挑戦した2冊でもありました。それを感じとって伝えてくださる書店員さんの偉大さと感謝の気持ちを感じた一日でした。

 

そして、改めて受賞者のみなさま、おめでとうございます!

 

 

『おしくら・まんじゅう』『おふとんかけたら』10周年フェア開催中!

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「だるまさんシリーズ」のかがくいひろしさんが手がける『おしくら・まんじゅう』と『おふとんかけたら』が、発売から10年を迎えます。
このたび10周年を記念して、読者プレゼントキャンペーンを実施します。
1,100名様にオリジナルグッズが当たるチャンスです!
ご応募お待ちしております!

 

■キャンペーン概要

抽選で1,100名様にオリジナルグッズが当たる、読者キャンペーンを実施。

 

 

【賞品】

・オリジナルなまえシール 1,000名様

・オリジナルマグカップ 100名様

*ともに非売品

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【応募要項】

『おしくら・まんじゅう』『おふとんかけたら』のフェア帯についている応募券を切り取って官製はがきに貼り、郵便番号・住所・氏名(フリガナ)・電話番号・性別・年齢・メールアドレスを明記の上、ご応募ください。ご意見・ご感想もお待ちしております。

 

【応募締切】

2020年4月20日(月)消印有効

*当選の発表は賞品の発送(6月上旬予定)をもってかえさせていただきます。

 

【対象商品】

おしくら・まんじゅう』もしくは『おふとんかけたら

 

【応募宛先】
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-31-15-3B
ブロンズ新社「おしくらまんじゅう・おふとんかけたら10周年フェア」読者プレゼント係
※電話やFAX、メールでのご応募は受け付けておりません。
※お預かりした個人情報は、賞品の発送、ブロンズ新社の情報送付、および個人を特定しない統計資料作成のみに使用させていただきます。

 

書籍は、全国の書店・ネット書店にてお買い求めください。
ご応募お待ちしております!

 



 

『やすみのひ』が発売になりました。

すっかり涼しく秋めいてきましたね。

そろそろ全国の本屋さんの棚で、

こちらのめざましどけいさんが、

すやすやのんきに、ねむりこけている頃でしょうか。

 

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かわいすぎるので、毛布を・・・

 

『やすみのひ』は、めざましどけいさんや、ほうきさん、

ちょきんばこさんなど、わたしたちの身近にあるものが、

やすみのひに、思い思いにやりたいことをしてたのしむようすを、

ユーモラスに描いた絵本です。

 

眺めていると、心がのんびりしてくるような、

うつくしい絵を描いて下さったのは、小池壮太さん。

ふだんは主に画壇で活躍されている洋画家さんです。

 

 

こんな素敵な風景画や・・・

 

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こんな絵が部屋にあったら、ゆったりした気持ちになれそうだなあ。

 

 

可愛らしさのかたまりのような、こんな絵も・・・

 

 

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このみ!欲しい! 興奮するも、とうの昔に売却済みでした。

 

 

自然を描いた風景画がまた、すてきなのです。
いい絵ですねえ。

 

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穏やかで品がある。あたたかみが感じられるのは、絵本の絵とも共通しています。

 

卓越したテクニックとクオリティで描いて下さった、

今回の『やすみのひ』は、ユーモラスで豊かな絵がつまった、

ちいさな名画館のような絵本です。

こどもがまだ小さくて、美術館に行くのを躊躇してしまうような、

おとうさん、おかあさん(かつてのわたしです)も、

わんぱくこぞうをひざにのせて、『やすみのひ』名画館を、

気兼ねなく、たのしんでいただけたらうれしいです。

 

 

 

最後の制作の追い込みでは、

やすみのひ感ゼロの、崖っぷちの鬼進行で、

みな一丸となって、刊行まで駆け抜けた『やすみのひ』。

 

(なぜ・・・どうしてこうなったのか・・・)

 

仕上がりは大満足。

刷り色も鮮やかな、のんきでやさしい絵本になりました。

 

 

小池先生は、校了してすぐに飛行機に乗って、

ケニアのサバンナで、やすみのひ。

 

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これ以上ない解放感。いいですなあ。

 

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現地キッズに囲まれ、人気者すぎの小池さん。笑。

 

 

担当編集のわたしは、見本の確認が済むなり、光の速度で温泉宿へ向かい、

栃木県の山奥にある、平家の里でやすみのひ。

 

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雑草つんで、こどもと虫を捕まえる以外、なーんにもしませんでした。

 

やすみのひは、だれにとってもいいものです。

毎日働いてばっかりいると、つかれちゃうから、

いっこがんばったら、みっつ楽しいことしちゃうくらいの感覚で、

近頃のわたしは生きていますね。

 

『やすみのひ』 を読んだあとは、妙に気がゆるむので、

家事も仕事も、なにもかーもやめちゃって、

ごろりーんと、リラックスするのもよいのではないでしょうか。

 

 

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みんなねてる・・・。わたしも今日は、はやくねよう。

 

 

ではではみなさま、どうぞよいおやすみをー。

 

(編集部 沖本)

 

 

 

みやこしあきこ×シドニー・スミスインタビュー3

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『よるのかえりみち で、2016年度のボローニャ・ラガッツィ賞特別賞を受賞した、みやこしあきこさんと、『うみべのまちで』で、2018年度のケイト・グリーナウェイ賞を受賞したカナダ在住の絵本作家、シドニー・スミスさん。

東京とトロント、海を隔てて絵本作家として活躍されている同世代のおふたりは、ボローニャ・ブックフェアで出会って以来、親しく交流をつづけています。

 3回目となる今回は、おふたりに「お互いのこと」についておはなしをうかがいました。特別に描き下ろしていただいた原画や、お互いへの質問&回答も読み応え十分の、同世代作家インタビュー最終回です。

 

翻訳=岩城義人 インタビュー・構成=沖本敦子

 

 

 

第3回 お互いのこと

 

シドニーさんは、みやこしさん以外にも、国を超えておつきあいのある絵本作家さんはいらっしゃいますか?

 

シドニー イギリスとアイルランドに、イラストレーターの友人が何人かいます。数年前ブータンに旅行したとき、とても才能のある若いイラストレーターたちにも出会いました。ブータンは、伝統的に物語を口で伝えてきたので、絵本は新しい文化です。その新しい形とともに、彼らの新たな旅がはじまると思うと、胸が熱くなります。世界には、絵本にたいして深い歴史と理解をもつ国が多く存在します。ブータンもきっとそのひとつになるでしょう。さまざまな国のさまざまな創作者から、学ぶことはたくさんあります。

 

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 ボローニャブックフェア会場で。シドニーさんとみやこしさん。

 

 

シドニーさんとみやこしさんの作家同士の交流は、どんな風にはじまったのでしょう?

 

みやこし 『おはなをあげる 』(ジョナルノ・ローソン文 シドニー・スミス絵 ポプラ社)の作者、ジョナルノ・ローソンさんが、英語版『もりのおくのおちゃかいへ』(みやこしあきこ 偕成社)を読んで気に入ってメールをくれました。私もちょうどその頃『おはなをあげる』に、私と似たものを感じて気に入っていたのでとても嬉しかった。そのつながりで今度はシドニーさんからもメールをもらってやりとりをしていたら、偶然ボローニャの会場でお会いできたので驚きました。

 

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シドニーさんの 『おはなをあげる』より。 Sidewalk Flowers ©2015 JonArno Lawson ©2015 Sydney Smith

 

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みやこしさんの『もりのおくのおちゃかいへ』より The Tea Party in the Woods ©2010 Akiko Miyakoshi

 

 

シドニーさんは、みやこしさんの最新作『ぼくのたび』をお読みになって、どんな感想をもたれましたか?

 

シドニー 口にすると照れますが、ぼくはみやこしさんの大ファンなんです。正直、『ぼくのたび』を受けとるのがこわかった。同じイラストレーターとして、嫉妬するかもしれませんし。なにをどう見せるかという点で、ぼくとみやこしさんには共通するところがあると思います。そして、ときに彼女はぼくよりも上手にそれを表現する。光と遠近法の使い方が、天才的だと思います。彼女の描くキャラクターたちは、表情や動きがゆたかでありながら、なぞめいてもいる。それが読者をひきつけるのでしょう。動物であっても、気まぐれな幼稚さはまったくありません。ぼくは自分の描くキャラクターすべてに愛着をもっていますが、みやこしさんの作品からも同じものを感じます。

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『ぼくのたび』シドニーさん

 

みやこしさんは、シドニーさんの『うみべのまちで』をお読みになって、どんな感想をもたれましたか?

 

みやこし まず、表紙の海の絵が大好きです。言葉にならない、見る人に共感を抱かせる、ストーリーを感じる絵が大好きで、自分でもそういう絵が描けるようにといつも制作しています。そういった、その1冊の鍵となる大事な1枚があるかどうかがわたしにとって大事なポイントなのですが、この海の絵はまさにそうです。見るたびにずっと眺めていられます。シドニーさんの絵は、優しくて品があって、真似して描きたくなってしまいます。

 

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『うみべのまちで』とみやこしさん

 

 

みやこしさんから、シドニーさんへ質問

 

今回のインタビューでは、双方にそれぞれへ向けた質問を用意していただきました。まずは、みやこしさんから、シドニーさんへの質問です。

 

ひとつめ「いままでは文章に絵をつけられていましたが、次作では文章も絵もシドニーさんが手がけられるそうですね。絵のみを担当するときと、作・絵を手がけるときのちがいはなんでしょう?」

 

シドニー 次作は『Small in the City』というタイトルで、はじめてテキストもぼくが書いています。いままで手がけた絵本から学んだことの集大成として、なにかつくろうと思いました。テキストだけでもイラストだけでも語れない物語を、両方の観点から表現してみたくて。これまで担当した絵本のテキストは、別の人が書いており、ぼくの元に届いた時点で物語は完全なものです。ぼくがやるべきことは、そこに必要不可欠なイラストを描くこと。しかし、自分がつくる物語では、テキストを不完全なままにしてみようと思いました。

 

ふたつめの質問です。「絵本以外でやってみたいことはありますか?」

 

シドニー 映画やアニメーションをつくってみたいです。それに家もつくってみたい。大工技術はありませんが、やりがいがあると思います。

 

最後の質問です。「誰に最初のラフを見せますか? 家族には見せる?

 

シドニー ラフはだれにも見せず、しばらく手元に置いておきます。最初に見せるのは、担当編集者ですね。ラフは仮のアイディアで、そこから頭の中にあるより大きなアイディアに近づけていきます。自分のラフに可能性を見いだすのは、だれより自分自身ですし、どれだけ最終的なイメージからはなれていても、根気よくやるのが近道かなと。                                     

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みやこしさんが、シドニーさんへ向けて、描き下ろしてくれたイラスト。

 

 

シドニーさんから、みやこしさんへ質問

 

ひとつめ。

「あらゆる芸術、とりわけみやこしさんの作品にとって、光は重要な要素だと思います。光源や光度の表現にとてもこだわりを感じました。ちなみに、絵以外の芸術から光や構図の着想を得ることはありますか?」

 

みやこし 写真や映画です。自分で撮った写真もよく参考にして描きます。でもやはり絵画から得ることがいちばん多いですが。ドラマ「TWIN PEAKS」の、なにかほのめかすようなシーンに惹かれて絵を描いたこともあります。

 

 

ふたつめの質問。

イラストレーターを続けていくうえで、テーマや手法をしぼっていくタイプですか。それとも、あえて壁やルールをもうけず、自由に表現していくタイプですか。もしくはその両方?」

 

みやこし わたしはむしろ手法から絵の着想を得ることも多いので、描きたいものが浮かぶ手法は試していきたいと思っています。でも実際それぞれの手法を自分のものにするのにはかなりの時間と試作が必要なので、結局絞ることになりますね。

 

 

最後の質問です。

「みやこしさんの作品、ひいてはみやこしさん自身にとって、静けさや孤独はどんな意味をもっていますか?」

 

みやこし 飛行機でシベリア上空からひとつだけぽつんと見えた家の明かり、夜のまちの窓に見えた慎ましい生活。そういうものがやさしく影のように普段の何気ない平和な時間を浮き上がらせている感じがして、愛おしく感じます。 作品にそういう気持ちを込めることも多いです。

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シドニーさんがみやこしさんへ向けて、描き下ろしてくれたイラスト。

 

 

全3回に渡った「東京・トロント、同世代作家インタビュー」は、これでおしまいです。海を隔てたそれぞれの場所で、誠実にこどもの本に向き合うおふたりの、すてきなおはなしを伺うことができました。

「これからの子どもたちに、いいものを手渡していきたい」というつくり手の気持ちは、世界中どこでもそんなに大きく変わらないはず。これからも、こどもの本のつくり手たちの交流が、国境を超えて豊かにひろがっていきますように。

 

 

 

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みやこしあきこ Akiko Miyakoshi

1982年埼玉県生まれ。武蔵野美術大学卒業。大学在学中から絵本を描きはじめる。2007年より1年間ベルリンに滞在。2012年『もりのおくのおちゃかいへ』(偕成社)で、第17回日本絵本賞大賞を受賞。『よるのかえりみち』(偕成社)で、ボローニャ・ラガッツィ賞特別賞、ニューヨークタイムズ・ニューヨーク公共図書館絵本賞を受賞。作品に『ピアノはっぴょうかい』『これ だれの?』『ぼくのたび』(ブロンズ新社)、『のはらのおへや 』(ポプラ社)、『かいちゅうでんとう 』(福音館書店)他多数。1児の母。東京都在住。

http://miyakoshiakiko.com     @akikomiyakoshi

 

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『ぼくのたび』

作/みやこしあきこ ブロンズ新社 定価1500円+税

 ぼくがこのホテルをはじめて、どのくらいになるだろう?主人公のホテルのオーナーは、世界中からやってくるお客さんから知らない国のはなしをきき、旅への思いを募らせます。そして、あるひ、ぼくは、おおきなかばんをもって・・・。リトグラフによる美しい色彩と幻想的な絵が、読者を、ここではないべつのどこかへと誘います。

・絵本の製作過程を記録したメイキング動画はこちらから。

https://www.youtube.com/watch?v=ObZgQ0DN9rc

 

 

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シドニー・スミス Sydney Smith

 

カナダのノヴァ・スコシア州郊外に生まれる。ノヴァ・スコシア美術デザイン大学卒業。ジョナルノ・ローソン原案の文字のない絵本『おはなをあげる』(ポプラ社)で、カナダ総督文学賞(児童書部門)、ニューヨークタイムズ・ニューヨーク公共図書館絵本賞など、さまざまな賞を受賞する。海辺の炭鉱のまちのいちにちを描いた『うみべのまちで』(BL出版)で、2018年にケイト・グリーナウェイ賞を受賞。2児の父。家族とともにトロントに在住。 @Sydneydraws

 

うみべのまちで

うみべのまちで

文/ジョアン・シュウォーツ 絵/シドニー・スミス

訳/いわじょうよしひと BL出版 定価1600円+税

うみべの炭鉱のまちで暮らす少年のいちにちが、しずかにやさしく描かれます。時間によってさまざまに姿を変える海。夕方になると炭鉱からおとうさんがかえってきて、家族を眺めて潮風に吹かれます。ありふれた日常の愛おしさが、しずかに胸にせまる絵本。ケイト・グリーナウェイ賞受賞作。

 

みやこしあきこ×シドニー・スミスインタビュー2

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『よるのかえりみち』で、2016年度のボローニャ・ラガッツィ賞特別賞を受賞した、みやこしあきこさんと、『うみべのまちで』で、2018年度のケイト・グリーナウェイ賞を受賞したカナダ在住の絵本作家、シドニー・スミスさん。

東京とトロント、海を隔てて絵本作家として活躍されている同世代のおふたりは、ボローニャ・ブックフェアで出会って以来、親しく交流をつづけています。インタビュー第2回目は、お互いの作品のファンであるというおふたりに、それぞれの作品について、おはなしをうかがいました。

 

翻訳=岩城義人 インタビュー・構成=沖本敦子 

 

 

第2回 作品のこと

『うみべのまちで』  について

 『うみべのまちで』は、海辺にあるちいさな炭坑のまちが舞台。そこに生まれ、やがては自分も父のように炭鉱で働くであろう少年が、うみべのまちで過ごすおだやかな一日が、しずかに、やさしく描かれています。心が遠いところへもっていかれるような圧倒的な読後感でした。この作品を描かれる上で、いちばん心を砕かれたのは、どんなところでしょう?

 

シドニー いちばん大変だったのは、この物語が、特殊であり普遍的でもある点でしょうか。ここに描かれているのは、実在する場所で、じっさいに多くの人たちが送った人生です。ぼくが心がけたのは、少年の目にうつるささいなもの、だれもが知っている日常から、物語を表現することでした。日常的であればこそ、一見まったく別の世界のような話でも、この少年に共感をいだくことができるのではないかと。

 

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『うみべのまちで』より Town Is by the Sea ©2017 ︎Joanne Schwartz ©2017 ︎Sydney Smith

 

最初にテキストを読まれた後、シドニーさんはご自身の絵を通じて、どんなことを表現したいと思われましたか? 

 

シドニー 一読して、海のイラストが重要だと思いました。ぼくも海のそばに住んでいたので、わかることもあります。海は永続的であり、本書の美しいテキストで語られているように、実にさまざまな顔をもっています。

 

 

『うみべのまちで』では、さまざまに表情を変える、海と光と風が、とても魅力的に描かれています。この作品を描くにあたり、モデルとした場所はありますか?

 

シドニー  非公式ですが、ぼくはこの物語を、ノヴァ・スコシア州の東端にあるグレース・ベイという場所に設定しています。そのあたりは、かつて炭鉱のまちでした。ぼくたちの文化にとってとても大切な場所です。ぼくはこの絵本で、グレース・ベイを描こうと思いました。制作中は、何度もそのまちを訪れ、たくさんの写真をとり、スケッチもしました。じっさいにその、ちいさなまちに立って、海からの風を感じ、海面にきらめく太陽を見て、なにを感じるかが重要だったのです。

 

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『うみべのまちで』より。さまざまに表情を変える海がやさしく描かれる。 Town Is by the Sea ©2017 ︎Joanne Schwartz ©2017 ︎Sydney Smith

 

 

シドニーさんが子ども時代を過ごしたまちは、どんなところですか?

 

シドニー ぼくが育ったのは、大西洋からそう遠くない田舎の農場で、家では馬やヤギやニワトリをかっていました。父はミシュランのタイヤ工場につとめ、母は家で3人の子どもの世話。ぼくたちは季節を問わず、よく海へドライブに行ったものです。その後、東海岸から引越しましたが、はなれてみて気づいたこともあります。そのちいさなまちには、対立するふたつの要素があったことです。生活はまずしいけれど、自然は豊か。海岸にはごつごつとした崖があり、やわらかい砂浜がありました。

 

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炭鉱でのしごとを終えて・・・ Town Is by the Sea ©2017 ︎Joanne Schwartz ©2017 ︎Sydney Smith  

 

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おとうさんがかえってきます Town Is by the Sea ©2017 ︎Joanne Schwartz ©︎2017 Sydney Smith  

 

 

子どもの頃から、幾度となく思い出すような、印象的な情景はありますか?

 

シドニー  面白い質問ですね。海のそばや農場で育った思い出はたくさんありますが……。印象的なのがひとつ。子どもの頃、4歳くらいだったかな、ころんでひざをすりむいたんです。本当はたいして痛くなかったのだけど、ぼくは泣くことにした。すると友だちのおばあちゃんがぼくをなぐさめ、ひざの土をぬぐってくれたんです。そのとき、ぼくは心に決めました。その瞬間のことをずっと忘れずにいようと。

 

 

最後に、『うみべのまちへ』の読者に向けて、メッセージをお願いします。

 

シドニー この絵本を読むみなさんへ。楽しんでもらえるよう心をこめて描きました。テキストを書いたジョアンさんもぼくも、この本を通じて、ぼくらが育ったまちをみなさんと共有したいと思っています。みなさんの住むまちとは一見ことなるかもしれません。でも本当はとても似ているのです。このお話の少年のように、ぼくたちみんなに大切な人がいて、その人たちを守り、いっしょに生きていくことを願っているのですから。

 

 

 

『ぼくのたび』  について

 みやこしさんが、長年絵本のテーマとしてあたためていた「たび」。設定やストーリーの変更を幾度も重ねて最終的に完成した『ぼくのたび』では、たび自体の楽しさではなく、ここではない別の場所へ想いを募らせる気持ちや、ある日、どこかへ出かけていくことへの憧れが描かれています。ちいさなホテルのオーナーである「ぼく」は、自分の住むまちをいちども出たことがありません。

 

みやこし 最初は主人公がたびをするお話でした。でもなかなかこれだという感じが得られず、描いている間ずっと、私はたびのなにが好きなのかと問い続けていました。何度もラフを作り直していく中で、たびに出る前の期待に膨らむ気持ち、知らない世界への憧れがわたしの表現したいたびの素晴らしさだと気付きました。狭い範囲で暮らしていたちいさい頃から、たくさんたびをしたいまもずっと変わらない気持ちです。

 

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『ぼくのたび』より I dream Of A Journey ©2018 Akiko Miyakoshi

 


ラフスケッチから原画完成までを追った、メイキング動画。みやこしさんが、リトグラフという手法を使い、どんな風に絵本をつくっていくのかを見ることができる。

 

 

『ぼくのたび』の原画は、すべてリトグラフでつくられています。

今回、リトグラフという手法を選択されたのは、どうしてですか?

 

みやこし いつも描きたい事が表現できる手法で描いています。濃厚な光と闇を表現したいときは木炭で黒の濃淡をつけたり、主人公の服の色を鮮やかに見せたいときは白い紙の地を生かして他の色を絞ったり。ここ数年間リトグラフを続けてきて、リトグラフ独特の色の重なりがとても綺麗なのでいつか絵本もリトグラフで描いてみたいと思っていました。むしろ、このリトの特性から着想を得た絵がこの絵本にはたくさん入っているんです。

 

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リトグラフの工房で、みやこしさんが一枚一枚刷り上げたうつくしい色彩。 I dream Of A Journey ©2018 Akiko Miyakoshi  

 

 

今回の絵本のインスピレーションを得た瞬間や情景があれば、教えてください。

 

みやこし 旅行先で実際に出会った風景、気持ち、人々がどのページにも出てきます。主人公のおじさんも、クリスマスにウィーンで泊まったホテルの人や、たびに出たい出たいと言っている友人や、ちいさい頃に憧れていた写真の中のヨーロッパ など、私の中の色んなピースが寄せ集まって生まれました。

 

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夏にドイツに滞在した際の経験が着想の一部になったシーン。 I dream Of A Journey ©2018 Akiko Miyakoshi

 

今回の絵本を描く上で、いちばん大切にしたことはどんなことですか?

 

みやこし 私にとってのたびの良さを伝える。借り物の言葉ではなく、私が実際に経験したことを隅々まで込めるようにしました。そうすることで読む人にも自分の事のようにリアリティを感じてもらえるかなと思います。

 

 

子どもの頃から、幾度となく思い出すような、印象的な情景はありますか?

 

みやこし 保育園の帰り道に通る、見晴らしの良いお気に入りの場所があって、その道が、家に飾ってあった写真の中の風景につながっていると思ってました。カレンダーかなにかの写真で、広くて晴れ渡った野原にぽつんと木があって、その下の日陰で遊んでみたくて、思い出の中で現実と混ざっています。

シドニーさんの答えをきいて、似たような経験も思い出したのですが、保育園のお迎えが来なくて最後の1人になってしまったとき、先生が泣いている私を膝に乗せて私の涙を指でぺろっとなめて「あっこのなみだ、しょっぱい!」と言ったんです。それが私にはなんだかすごくうれしかったのを覚えています。

 

 

たびがお好きなみやこしさん。いままで行った中で印象にのこっている場所と、つぎに旅行に行きたい場所があればおしえてください。

 

みやこし 小笠原諸島の父島とインドのヒマラヤのラダック地方です。両方とも大好きな場所で2回ずつ行ったのですが、今度は今年の春に生まれた娘と行ってみたいです。

 

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ひこうきにのって しらないまちへ。 I dream Of A Journey ©2018 Akiko Miyakoshi

 

最後に、『ぼくのたび』の読者に向けて、メッセージをお願いします。

 

みやこし 旅について語る人はいきいきしています。わたしも旅の話をするのが好きです。この本を読んだ後も、旅から帰ったばかりのように語りたくなるような気持ちになってもらえたら、そんなに嬉しいことはありません。

 

 

 

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みやこしあきこ Akiko Miyakoshi

1982年埼玉県生まれ。武蔵野美術大学卒業。大学在学中から絵本を描きはじめる。2007年より1年間ベルリンに滞在。2012年『もりのおくのおちゃかいへ』(偕成社)で、第17回日本絵本賞大賞を受賞。『よるのかえりみち』(偕成社)で、ボローニャ・ラガッツィ賞特別賞、ニューヨークタイムズ・ニューヨーク公共図書館絵本賞を受賞。作品に『ピアノはっぴょうかい』『これ だれの?』『ぼくのたび』(ブロンズ新社)、『のはらのおへや 』(ポプラ社)、『かいちゅうでんとう 』(福音館書店)他多数。1児の母。東京都在住。

http://miyakoshiakiko.com     @akikomiyakoshi

 

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『ぼくのたび』

作/みやこしあきこ ブロンズ新社 定価1500円+税

 ぼくがこのホテルをはじめて、どのくらいになるだろう?主人公のホテルのオーナーは、世界中からやってくるお客さんから知らない国のはなしをきき、旅への思いを募らせます。そして、あるひ、ぼくは、おおきなかばんをもって・・・。リトグラフによる美しい色彩と幻想的な絵が、読者を、ここではないべつのどこかへと誘います。

・絵本の製作過程を記録したメイキング動画はこちらから。

https://www.youtube.com/watch?v=ObZgQ0DN9rc

 

 

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シドニー・スミス Sydney Smith

 

カナダのノヴァ・スコシア州郊外に生まれる。ノヴァ・スコシア美術デザイン大学卒業。ジョナルノ・ローソン原案の文字のない絵本『おはなをあげる』(ポプラ社)で、カナダ総督文学賞(児童書部門)、ニューヨークタイムズ・ニューヨーク公共図書館絵本賞など、さまざまな賞を受賞する。海辺の炭鉱のまちのいちにちを描いた『うみべのまちで』(BL出版)で、2018年にケイト・グリーナウェイ賞を受賞。2児の父。家族とともにトロントに在住。 @Sydneydraws

 

うみべのまちで

うみべのまちで

文/ジョアン・シュウォーツ 絵/シドニー・スミス

訳/いわじょうよしひと BL出版 定価1600円+税

うみべの炭鉱のまちで暮らす少年のいちにちが、しずかにやさしく描かれます。時間によってさまざまに姿を変える海。夕方になると炭鉱からおとうさんがかえってきて、家族を眺めて潮風に吹かれます。ありふれた日常の愛おしさが、しずかに胸にせまる絵本。ケイト・グリーナウェイ賞受賞作。

 

みやこしあきこ×シドニー・スミスインタビュー1

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よるのかえりみち』で、2016年度のボローニャ・ラガッツィ賞特別賞を受賞した、みやこしあきこさんと、『うみべのまちで』で、2018年度のケイト・グリーナウェイ賞を受賞したカナダ在住の絵本作家、シドニー・スミスさん。

東京とトロント、海を隔てて絵本作家として活躍されている同世代のおふたりは、ボローニャ・ブックフェアで出会って以来、親しく交流をつづけています。

 お互いの作品のファンであるというおふたりに、「絵本を描くこと」について、おはなしをうかがいました。絵本作家としてどんな日々を過ごしているのでしょう。日本とカナダの同世代絵本作家インタビュー。その様子を全3回にわたってお届けします。

 

翻訳=岩城義人 インタビュー・構成=沖本敦子 

 

 

 

 

第1回 絵本作家の日常

 

 

絵本作家としてのキャリアは、今年でどれくらいになりますか?

 

みやこし 『たいふうがくる』(BL出版)で絵本作家としてデビューしてからは10年になります。でも、美大にいた頃からずっと絵本は描いていました。

 

シドニー はじめて絵本を描いたのは2004年。まだアートスクールに通っていた頃です。そこから数えると、絵本に関わって、今年で15年になります。

 

 

子どもの頃から、絵本作家になりたかったのですか?

 

みやこし 子どもの頃から、絵を描くことが大好きでした。ナウシカや、「こまったさん」シリーズの絵を模写して、友だちに勝手にプレゼントしたり。わたしは早生まれでぼんやりしてたんですけど「絵だけは上手なんだぞ」って、こっそり思っていました。予備校時代に『よあけ 』(ユリー・シュルヴィッツ 瀬田貞二訳 福音館書店)を読んで感銘を受け、絵本を描きたいと思うようになりました。美大に入ってからは、年に1冊絵本をつくり、大学2年生以降は、毎年必ず「ニッサン童話と絵本のグランプリ」(現在の「日産 童話と絵本のグランプリ」)に応募して、毎年必ず入賞していた。野心がありました(笑)。

 

シドニー 子どもの頃は、とりたてて絵がうまかったわけではありません。地元のノヴァ・スコシアの学校には、ぼくより絵がうまい子がたくさんいました。つづけてこられたのは、両親や目標となる人たちのおかげです。もちろん、絵を描くことはずっと好きでした。子どもの頃は、怪物やヒーローなどの架空のものを描くことが多かったと思います。ひとりになりたいときは、そうやって自分だけの世界にひたっていました。

 

 

絵本作家として、いまの暮らしはいかがでしょう?

 

みやこし 最高です。朝起きて「今日なに描こう」と思いながら、自転車で15分くらいかけてアトリエに行きます。日によっては、入谷にある版画工房で作業することも。集中できる時間帯は午前中。集中して描いたり、描きおえた作品を並べて、ゆっくり眺めたり。アトリエは、平澤朋子さん と、平岡瞳さんとの共同アトリエです。制作のあいまにおしゃべりしたり、お茶をのんでおやつを食べたり。制作は11時くらいから夕方まで。自宅で描いていた頃は、夜中まで作業をしつづけることもありましたが、アトリエをつくったことで、家に帰ってからは、本を読んだり、ドラマを見たりして、のんびりと過ごせるようになりました。

 

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『ぼくのたび』制作時のみやこしさんのアトリエ

 

 

シドニーさんはいかがですか?

 

シドニー 充実しています。現在は絵本作家として自立し、父親でもある。自分は恵まれていると思います。好きなときに好きなことをし、時間を気にして仕事をすることもありません。手をとめたときが休憩時間です。とはいえ、休憩中は息子になにか描いてあげています。それがいまのぼくの生活ですが、仕事でつまずくときもありますし、うまくいかないと、やはり悩みます。仕事をするのは、朝が多いです。ただし、よく眠り、脳の栄養になるものを読み、コーヒーを飲み過ぎなければ、という条件つきですが。

ランニングなどして体を動かしていると、意外なアイディアがでてくることもあります。そういうときは気持ちがいいですね。ぼくのアトリエは自宅にあります。キッチンのとなりの部屋で、身近に家族がいます。じつはいま、その家族がふえつつあって。2、3週間のうちに赤ちゃんが生まれるんです。なので、いまはできるだけ家にいて、仕事をしながら、その子をむかえる準備をしています。

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シドニーさんのアトリエ 

 

 

アトリエの中に、インスピレーションを与えてくれるものや、心を和ませてくれるものはありますか?

 

みやこし アトリエ仲間の机に新しいスケッチが貼ってあったり、出来たての本が置いてあったり、花が飾ってあったり。家でなくアトリエで絵を描くようになってから、そういう仲間とのやりとりで、嬉しい気持ちになります。

 

シドニー 絵筆にペン、インクに絵具でしょうか。高価ではありませんが、ぼくにとっては特別なものです。あと、たくさんの絵本もあります。古いものから新しいものまで。ときどきぱらぱらめくって、想像力を刺激しています。

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みやこしさんの現在のアトリエ 

 

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みやこしさんの作業机のとなりにいるふくろう

 

 

絵本の制作過程で幸福感を味わうのは、どんなときでしょう?

 

みやこし  わたしが絵本をつくるときには、ストーリーよりも先に、まず描きたい絵のイメージや世界観がつよくあります。そのピースを物語に落とし込んでいって、編み上げていく。最初はイメージだけで漠然としていたものを、すこしずつ肉付けしていくことで、その世界が自分の手の中でかたちになっていく過程は、とても楽しいです。

 

シドニー クリエイターならきっとだれもが経験する、言葉にできない瞬間があります。不意に訪れる瞬間ですが、そのとき頭の中からいっさいの余計なものが消える。まるで、自分と別のだれか(なにか)が共同作業しているような、崇高な時間です。

 

 

作業が煮詰まることはありますか? そんなときはどんな風に過ごしますか?

 

みやこし できないときはできないので、あまり無理して作業を進めないことが多いです。常時3冊くらいの絵本を進めているので、他の作品の制作にうつったり。うまく進まないときは、まだ時がきていない、という感じ。しばらく時間をおいて熟成させると、思ってもいない方向に物語が変わっていったりすることも。わたしの絵本づくりには、どの作品もある程度の時間が必要です。どれも3年くらいはかかるかな。

煮詰まったときは、伊勢丹に行って洋服を見ます。すてきな着こなしをしている人の、色合わせなんかをよく見ています。「あの色の組み合わせを、絵の構成で使ってみよう」とか、盗っ人の目で見ています(笑)。あと、時間がとれるときは旅行に行きます。『ぼくのたび』の制作中も途中でハワイに1回、絵本が出てからは与論島に行きました。

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制作が終わり、みやこしさんが訪れた与論島

 

シドニー ぼくが煮詰まったときは、アート・ギャラリーや、オズボーン・コレクション(注1)を見に行きます。オズボーン・コレクションは、トロントにある子どもの本の保管所です。そこへ行くと、いつも新しい発見があります。あと、近所の植物園へも行きますね。まるで室内のジャングルで、散歩しているととても心が落ちつきます。

 

注1 イギリスの州立図書館の館長であったエドガー・オズボーン氏が、メーブル夫人とともに蒐集した、主にイギリスで出版された子どもの本の古書コレクション。トロント公共図書館の司書であったリリアン・スミス(1887-1983)の仕事ぶりに感銘を受けたオズボーン氏は、夫人の死後、コレクションをトロント公共図書館へ寄贈。その後も蒐集されつづけたコレクションは、現在では1万5千冊を超える。コレクションはトロント公共図書館リリアン・スミス分館 (@TPLLillianSmith)で閲覧が可能。

 

 

 

 

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みやこしあきこ Akiko Miyakoshi

1982年埼玉県生まれ。武蔵野美術大学卒業。大学在学中から絵本を描きはじめる。2007年より1年間ベルリンに滞在。2012年『もりのおくのおちゃかいへ』(偕成社)で、第17回日本絵本賞大賞を受賞。『よるのかえりみち』(偕成社)で、ボローニャ・ラガッツィ賞特別賞、ニューヨークタイムズ・ニューヨーク公共図書館絵本賞を受賞。作品に『ピアノはっぴょうかい』『これ だれの?』『ぼくのたび』(ブロンズ新社)、『のはらのおへや 』(ポプラ社)、『かいちゅうでんとう 』(福音館書店)他多数。1児の母。東京都在住。

http://miyakoshiakiko.com     @akikomiyakoshi

 

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『ぼくのたび』

作/みやこしあきこ ブロンズ新社 定価1500円+税

 ぼくがこのホテルをはじめて、どのくらいになるだろう?主人公のホテルのオーナーは、世界中からやってくるお客さんから知らない国のはなしをきき、旅への思いを募らせます。そして、あるひ、ぼくは、おおきなかばんをもって・・・。リトグラフによる美しい色彩と幻想的な絵が、読者を、ここではないべつのどこかへと誘います。

・絵本の製作過程を記録したメイキング動画はこちらから。

https://www.youtube.com/watch?v=ObZgQ0DN9rc

 

 

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シドニー・スミス Sydney Smith

 

カナダのノヴァ・スコシア州郊外に生まれる。ノヴァ・スコシア美術デザイン大学卒業。ジョナルノ・ローソン原案の文字のない絵本『おはなをあげる』(ポプラ社)で、カナダ総督文学賞(児童書部門)、ニューヨークタイムズ・ニューヨーク公共図書館絵本賞など、さまざまな賞を受賞する。海辺の炭鉱のまちのいちにちを描いた『うみべのまちで』(BL出版)で、2018年にケイト・グリーナウェイ賞を受賞。2児の父。家族とともにトロントに在住。 @Sydneydraws

 

うみべのまちで

うみべのまちで

文/ジョアン・シュウォーツ 絵/シドニー・スミス

訳/いわじょうよしひと BL出版 定価1600円+税

うみべの炭鉱のまちで暮らす少年のいちにちが、しずかにやさしく描かれます。時間によってさまざまに姿を変える海。夕方になると炭鉱からおとうさんがかえってきて、家族を眺めて潮風に吹かれます。ありふれた日常の愛おしさが、しずかに胸にせまる絵本。ケイト・グリーナウェイ賞受賞作。