工藤さんの絵本は、それがどんな内容のものでも読む人への愛情が、おどろくほどギュッと詰まっています。ことに、ちいさな読者への。
「ペンギンきょうだい」という4冊完結のシリーズ絵本を担当している間、完成した原画を最初にいただいて一枚一枚をめくる時、じんわりじんわりと、なんともいえない感動が体に満ちていくのを毎回感じていました。
ラフから完成原画まで途中を編集が拝見しない制作スタイルなので、ストーリーやおおまかな流れは分かっていても原画アップまでは、工藤さんのならではの細かな描き込みやキャラクターの動き、表情、ちりばめられたユーモアはわかりません。
でもそこが工藤さんの真骨頂!
ラフを拝見したとき以上の感動がかならずあり、整合性などもすべて注意深く確認されているのです。
完成した原画を最初の読者として、拝見するときは扉をゆっくり開いて、その世界に足を踏み込み、存分におはなしの世界を歩き回ることのできるなににも代え難いしあわせな時間でした。
発売後は、たくさんの読者を得て、寄せられる感想にはなんでこんなに子ども心を掴んでいるんでしょう? という驚きが綴られています。
いまも変わらず版を重ねる大切なシリーズです。
4冊完結でバラバラに読んでも成立し面白いですが、れっしゃ・ふね・ひこうき・バス……と順番に読むと実は物語はつながっていて、背景のキャラクターたち全てにひとつらなりの物語があるという驚くべき構成も工藤さんならではの緻密なお仕事です。
ノラネコぐんだんは工藤さんのもうひとつのお仕事。コミックから生まれたキャラクター。絵本とコミックはキャラクターが同一だったりとゆるくつながっていますが、読み心地というのか読み味というのか肌合いがすこし違います。
モエにさりげなく連載されている四コマ、もうかわいくて、憎たらしくて、ひょうひょうとしてて、くだらなくて最高なんです。(今回、この連載をノラネコ中心にまとめたコミックが展示に合わせて発売されましたよ)
ノラネコの絵本は、そのコミックの持ち味の良さが一番ダイレクトに感じられる作品かもしれません。
でも巻をかさねるごとに、その表情も少しずつ変化させ見事です。
展示も愛情いっぱい。
随所に、工藤さんの思いが溢れてます。
ところどころに展示された映像は旦那さま作。
全ての書籍とほとんどのグッズデザインをされている(!!)担当編集の森綾子さんと、三人四脚でちくちく縫ってきたタペストリーが大きく広げられたような空間でした。
ペンギンきょうだいの原画もより抜いて飾っていただいていますよ。
展示は銀座松屋にて5/6まで。となりではトムとジェリー展もやっていますよ!
展示詳細はこちらから。
(編集・山縣)
*ノラネコぐんだん展の会場内は撮影禁止です。あらかじめご了承ください。