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岡田よしたかさんインタビュー「子どもと、絵本と、ぼくと」

うどんのうーやん』『ちくわのわーさん』などユーモア絵本の作者・岡田よしたかさんは、絵本作家としてデビューなさる前、保育所にお勤めされ、最終的に園を閉じるまでお仕事をされたそうです。

さくらもちのさくらこさん』発売記念イベントが開催された枚方蔦屋書店さん、今井書店出雲店さんで、保育所でのエピソードや子育てについてお話を伺いました。

 

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Q 岡田さんは、芸大を卒業なさったあと、31才から11年間、保育所で保育士をなさっていて、そこで絵本と出会われたと伺っています。

 

A そうなんです。それまで絵本をじっくり読んだことはなかったんですけど、保育所でたくさん絵本を読んで、絵本ておもろいなあ、思いました。

僕流のアレンジで、子どもたちにもよく読みきかせをしましたけど、田島征彦さんの『じごくのそうべえ』や片山健さんの『コッコさん』シリーズは特に大好きでした。

そのときは、自分に描けるとはまったく思っていませんでした。

 

 

Q そんな岡田さんが絵本作家になられて、ブロンズ新社から6冊目の絵本『さくらもちのさくらこさん』が発売されました。

さくらこさん、なかなかややこしい性格ですが、岡田さんがいらした保育所にも、さくらこさんに似た一筋縄ではいかないお子さんはいましたか?

 

A 機嫌のわるい子や、途中から入ってきて馴染めない子もいました。絶対笑わないキエちゃんいうおんなの子がおったんですけど、絶対笑らかしたろ思て、マンツーマンでおもろいことし続けたんです。だんだん口の端がひくひくってなって、こらえきれずに吹き出したときは快感でしたわ。

 

 

Q 子どもってすごいと思われたことはありますか?

 

A 僕が働いていたのは無認可の保育所だったんですけど、韓国から在日の人を頼って出稼ぎに来た人たちの子どもを預かることもあって、その子らは日本語ができないんです。

そしたら、年長のリーダー格のナオちゃんいう子が、「チヘは日本語わからへんから、わからなくてもできるルールで遊ぼ!」って提案したんですわ。たいしたもんやと思いましたね。

 

 

Q 今でも思い出されるシーンを教えてください。

 

A 僕とこの保育所では、子どもらの誕生日に、その子の写真を何枚か貼った誕生日カードを渡すんです。

ある夕方遅く、他の子らはみんなお迎えがきて帰ってしもて、ちょうど誕生日のへミンちゃんいう子と二人きりやったんです。

カードを仕上げて、遊んでたへミンちゃんに渡したら、普段さわがしい子やのに、腹ばいになったまま、10分くらい、じぃーとそのカードを見続けとるんです。

それから台所で給湯器を直しに来たおじちゃんにも「これ、へミン」いうて見せにいくんですわ。

ほんまに地味なちっちゃなもんやのに、嬉しかったんやろな、思います。えらいもん見てしもたな、と思いました。

 

 

Q 岡田さんがご自分のお子さんと接するとき、奥様と役割分担はありますか?

 

A 学校のことは甘えて奥さんに任せてしまうことが多いですが、ちっこいときは、オムツを替えたりしてました。保育所でやってたから手慣れたもんやと思てたけど、ブランクがあったから、奥さんに「ほんまにやってたん?」言われましたけど。

 

 

Q 子どもにガツンと言わねばならないのはどんなときでしょう?

 

A 難しいですね。逆効果のこともあるし、あんまり、よう言いません。

上の子が発達障害で、発達障害児の親のためのペアレントレーニングを受けたとき、カウンセラーの人から教わったんですが、常識的に考えて、子どもが悪いことをしたり、誰かに迷惑をかけたとき、頭ごなしに怒らず、その子の気持ちをまず受け入れる。

どうしてそうしたのかを、問い詰めず話しやすいように聞く。

あ、そうか、そう思ったからそうしたのか、と認めてあげて、そこから話を始める。

こういうことをすると、こうなる。だから今度はこうしてみようと順番をたどったり、言われた方はどんな気持ちになるかを一緒に考えたり。

でもそれは、障害に関係なく、すべての子どもたちに対して当てはまる接し方だと思います。てなこと言うてますけど、日常でいつも実践できているとは、よう言いません。

 

 

Q 今なら言える、「あんときは、おとうちゃんが悪かった……」という親としての苦い思い出はありますか?

 

A いっぱいあります。子どもがふたりになってからは手一杯になって、いろいろ怒ったりしたんですが、今になってみると、なんで怒ったか全然覚えてない。

しょうもないことで怒ったんやなと思うし、感情的になったらあかんと思うんですが、今でもついつい、ありますね。

でも、子どもが肉体的にも精神的にも大きくなって、親に充分対抗できるくらい大人になったら、感情的に怒ることがあってもいいかもと思います。ちゃんと親子ゲンカができるなら。

小さい頃は、親が一方的に押さえつけるような形になってしまうからよくないけど。

 

 

Q 子どもさんに対して「親を超えている!」と思われる瞬間はありますか?

 

A 虫歯がないこと(笑)。

 

 

Q 岡田さんのお子さんは、お兄ちゃんが高3、弟さんが中3です。

ここはまだ勝っていると思われるところは、どんなところでしょう?

 

A 下の子については、ロック音楽の知識に関しては勝ってます。しかしビートルズについては負けてますけど。

 

 

Q 子どもさんを育てる上で、これはしておいてよかった!と思われることを教えてください。

 

A ないです。これをしてあげた、してやったということは全然ない。

 

 

Q もしお孫さんができたら、してみたいことってありますか?

 

A そらもう、一緒に酒飲みたいですわ(笑)。

 

(インタビューまとめ 営業 奥田朋子)