この秋、発売となった『まほうのハッピーハロウィン』。
おかげさまで、ハロウィンコーナーに元気に並んでいます。
おはなしは石津ちひろさん、絵は岡田千晶さんによる
最近すこしずつ暮らしに定着してきた
日本の子どもたちのハロウィンまつりを描いた絵本です。
石津さんの文章で描き出される子どもの心の動き、
暮れゆく秋の夕刻の光と影を表現した岡田さんの素晴らしい絵…。
ことし、ハロウィンまつりをできない子どもたちにも
絵本のなかで、その楽しさを味わってもらえるかもしれません。
今日はすこし誕生の様子をご紹介したいと思います。
【スタートは一枚のイラストから】
岡田さんと担当編集者で、なにか絵本を作りましょう…
と話しだしたのは、実は何年も前のこと。
岡田さんから見せていただいたイラストファイルのなかで
ふと気になったこの1枚の絵。
この女の子、いったいなにをしているのかしら?
このシーンをふくらませておはなしを作りましょうか…と語らいながら
しばらく「おはなし」は動き出しませんでした。
なかなか孵化しない絵本のたまごを「待つ」という時間も
実は大事だったりするのです。
そんななか、とある仕事でこのイラストをハロウィンの絵にアレンジした岡田さん。
「なにかが生まれそうな気がします」とご連絡をいただきました。
止まっていた企画が動き出した瞬間でした。
ちょうと同じ時期に、原画展会場でばったり出会った作家の石津ちひろさんと
一緒になにかお仕事しましょう、と話した岡田さんから、
このおはなしを石津さんにお願いしたいとご希望がありました。
【おはなしの種は実際のハロウィン祭りから】
「あんまりハロウィンにでかけた経験がないから、できるかしら…」と
おっしゃる石津さんと、実際に取材したいという岡田さんと、
ある秋の日にでかけたのは、川崎市にある英語教室で行われているハロウィンまつりでした。
毎年恒例で20年ほど続いている、地元の方たちともつながったあたたかな会。
教室を長年続けてこられた、ふところの深い先生のもと、
大きな子たちがリーダーとなって開催しているこのイベント。
夕方から夜の数時間の会の中に、
キラキラした興奮や小さな冒険が詰まっていました。
きっとこの夜のことを、ずっと覚えているのだろうな…。
石津さんのなかからお話が少しずつ芽生えていきました。
「ハロウィンパーティは、子供たちが、
“非日常”という舞台にあがるようなイベント。
特別な自分になったときに出てくるパワーで、一歩前進し成長する姿を
ミュージカルのようなイメージで書いてみたい…」
フランスから帰国後、舞台の仕事に関わっておられた石津さん。
いつもと違う自分になったとき、湧き出てくる力を
描いてみたいと思われたそうです。
おもしろいもので、主人公というのは、
いつも作者の思い通りに動いていかないもののよう。
最初はおとなしい女の子? と考えていた「みのり」を動かしていくと、
どうしても活発な子になってしまうのよ…という石津さん。
対照的におとなしい性格で、勇気を出して変わっていく
「あきと」という男の子を登場させることに。
ちなみに秋なので「みのり」「あきと」という名前をつけたそうです。
出てくる猫は石津さん宅にいる半ノラの「しろ」がモデルです。
そして、試行錯誤の末、おはなしは出来上がりました。
岡田千晶さんにこのテキストをお渡しして
いよいよ作画がはじまります。