ブロンズ新社公式ブログ

絵本やイベント情報についてご紹介します。

みやこしあきこさんの絵本、進行中です。


しとしと雨の昨日、都内にある版画工房へ出かけてきました。
みやこしあきこさんが、新刊絵本のリトグラフを制作しているところを
見せてもらいに行ったのです。
リトグラフと銅版画を刷ることのできる、
ちいさな版画工房に満ちていたのは、穏やかで静謐な空気。


工房で制作中の各人がこつこつと、自分の世界を
1枚の作品におとこしんでいく集中力が独特の緊張感を生み、
見学者のわたしの背筋も自然と伸びます。



邪魔にならないよう、制作風景を見学させていただきましたが、
みやこしさんの真剣な表情のすてきなこと。


ものをつくる人の真剣な表情をみていると、
自分の心のなかにあるものを、形にうつしとること、
ただそれだけに全神経を凝らす時間の、密度の濃さと豊かさが窺えます。
そのときに立ち上ってくる気配は、
いい書物に出会い、ぐっと集中して読むときに、
からだをつつむ、あの空気にも少し似ています。





みやこしさんの絵は、やさしく、静かなのだけれど、吸引力の強い絵で、
絵の前に立つ人を、ここではない別のどこかに引き込んでくれる力に満ちています。
ほんものの小説や、まがいものでないファンタジーに出会ったときに
体感できる、あの感覚を呼び起こしてくれる絵。
そういうのって、そんなにたくさん見つからないと思います。




ナルニア国物語はてしない物語、春の窓、たのしい川べ、プラテーロ・・・
時間がたっぷりあった子ども時代、それこそからだごとおはなしの中に入りこみ、
現実と本の世界の境界が完全になくなる状態で物語に埋没したあの幸福な感覚と、
みやこしさんの絵はどこか地続きのようで、
わたしは見るたびに、「魔法がかった絵」と思ってしまいます。
宮越さんの絵が、日本だけでなく海外でも評価が高いのも、なるほどと頷けます。



11月刊行予定の新作絵本のテーマは「旅」。
旅好きで、世界のあちこちを訪れているみやこしさんが、
長年ずっとあたためてきたテーマが、
こちらの版画工房で、ゆっくり絵本になりはじめています。


直近の新刊ではないのですが、
制作中の雰囲気をお伝えしたくて、ブログにしました。


どうぞみなさま、本ができるのを楽しみにお待ちくださいね。


(編集部・沖本 写真・佐古)