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天女絵本第2弾『天女かあさん』 その2

絵本で伝えたいのは、癒しと勇気、
そして生きる楽しさです。


著者ペク・ヒナさんインタビュー




発売直後、韓国で総合1位にランキングした人気絵本『天女かあさん』。
韓国メディアで紹介されたペク・ヒナさんのインタビューから
抜粋してご紹介します。
*記事出展:  INTERPARK BOOKDB, Lim in-young / Ki jun-seo



ワーキングママの現実に
天女さまのファンタジーを加えた
ペク・ヒナの独特の物語

ⓒ INTERPARK BOOKDB, Lim in-young / Ki jun-seo


——新作『天女かあさん』は子どものための絵本ですが、
母親たちが共感するストーリーでもあったようですね。


働くお母さんたちから、この絵本を読んで胸が熱くなったという声を聞きました。
私もこの絵本のママのような仕事をする母のひとりですし、
読者が共感して楽しんでもらえたのなら、達成した気分です。
育児というのは、ほんとーーーっに大変ですから。
ベッドに横になって子どもに絵本を読み聞かせしている瞬間だけは、
少なくとも子どもと一緒に癒やされてくれるとよいなと思います。
お母さんが楽しめれば、子どもはその気持ちを100%感じとりますから。


——まちがい電話を受けた天女さまが、熱を出した子どもの世話をしに
下界へおりていくというファンタジーの中に、
仕事をする母親たちの現実が反映されていますね。


以前、出版社の社長さんと会ったとき、ふたりともワーキングマザーなので、
忙しいときに子どもを預けられる人がいなくて、
地団駄を踏んだ経験が何度もあったという話になって、
ものすごく盛りあがったことがありました。
「そんなとき、誰かが助けてくれたらいいのに ! 」
そのときの会話をもとに、ストーリーの骨組みをつくり、
私の2番目の息子をモチーフに、主人公ホホを構想しました。
『天女かあさん』はそんな母心から生まれました。



現実の背景写真と人形が
ひとつのフレームにおさまる瞬間は魔法 !

ⓒ INTERPARK BOOKDB, Lim in-young / Ki jun-seo
『天女かあさん』登場人物。(左から)ホホのママ、天女さま、ホホ


——『天女銭湯』も『天女かあさん』も、人形を使って撮影していますね。
なぜ絵で描かずに、人形制作にこだわっているのですか。


私は大学で視聴覚教育を専攻して、
多くの表現方法と伝え方があることを学びました。
表現には、何よりも、ストーリーが重要だと私は考えています。
なかでも、ストーリーと制作技術、ビジュアルで構成される絵本が
好きなんです。街の写真を撮影して背景にしたり、セットをつくって、
そこに人形たちを置くと、ひとつのフレームに世界がぴたりとおさまる―—
その瞬間はまさに「魔法だ ! 」と思います。
今のこの制作スタイルは、私が伝えたいストーリーを
最も効果的に表現できる手法だと思います。
絵本は、字を読めない子どもがどのページをめくっても、
ビジュアルだけで前後の文脈やその状況について
理解できるようにつくらなければいけません。
子どもが自分で考え、想像できる本が理想的だと考えているので、
文章を極力減らし、シーンの演出に力を注いでいます。




ⓒ INTERPARK BOOKDB, Lim in-young / Ki jun-seo
さまざまな表情のホホの顔は、シーンに応じて胴体に差しこみ、演出する


——人形制作による絵本づくりは、
より細かい表情や感情を伝えることができるというメリットがある一方、
膨大な制作時間がかかるのではないですか。


そうですね。たとえば、ホホのママが仕事を終えて家に向かって、
横断歩道を渡っているシーン。
そこには6人の通行人が登場しますが、雨なので、
それぞれが傘をさしているんですね。
傘1本つくるのに1日かかりました。
人物にはもちろん、もっともっと時間がかかりましたね。
人形は、スカルピーを使ってつくります。
粘土に似た素材で、オーブンで焼くと固まり、その上に着色して、
いろいろな表情の顔を用意します。
ホホは、息子をモチーフにしたキャラクターなので、
目鼻立ちや服などはすぐに完成しました。
主人公の天女さまも、数個の表情をつくればよかった。
意外と大変だったのは、ホホのママでした。
親子ですから、ホホと似ている必要があるし、まだ若いけれど、
生活に疲れた顔でなければならない。
でも鋭く見えないようにしました。ホホのママは、
シーンごとに感情の変化がはっきりしていたので、
顔の表情を複数用意して、何度も合わせて確かめました。


——『天女かあさん』の制作で苦心したのはどんな点ですか。


私の絵本は、現実とファンタジーを織り交ぜる作風ですが、
今回はとくに、キャラクターに現実感を持たせることを最も考慮しました。
この作品では、唯一、幻の存在は天女さまです。
でも、じつは天女さまも、天上ではとても忙しい母親なんだと思います。
偶然ホホのママと電話で話すことになり
「子どものぐあいがわるいならしょうがない」と降りてきました。
天女も、彼女なりに忙しい日常を送っていることを表現したくて、
羽衣をホホの家に忘れていったシーンを演出しました。
また、現実感を持たせるために、家具や小物などの制作でも、
キャラクターと比率をしっかりと合わせて、
ミニチュア感が出ないように心血を注ぎました。
小道具は手づくりするか、おもちゃをリメイクしたりします。
3Dプリンターで製作を依頼することもあります。




ⓒ INTERPARK BOOKDB, Lim in-young / Ki jun-seo
天女さまの着付け


——子ども向けの絵本には、教訓が込められることが多いですが、
あなたの作品には、強い教訓の代わりに、
エピソードを通じて生活の中での礼儀や関係を結ぶ大切さなどを伝えていますね。


教育的な情報はあふれていますし、絵本にまで強要されたくないと思うんですね。
大人の私でも嫌なんだから、子どもたちはもっと嫌でしょうね。
少なくとも私は絵本を通じて、慰めや勇気、生きる楽しさを与えたいという気持ちが強いです。


*記事の全文リンク
http://news.bookdb.co.kr/bdb/Interview.do?_method=InterviewDetail&sc.mreviewNo=66881