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もっと知りたい ヨシタケシンスケさん<4>

『りんごかもしれない』が発売になり、ついに絵本作家としてデビューしたわけですが、
ヨシタケさんと絵(イラストレーション)の関係を聞いてみました。


* * *


――「絵を描くことは精神衛生上必要な行為」っておっしゃってましたけど、いつごろから絵を描きはじめたんですか?


ヨシタケ ぼくが絵を描きはじめたのは、大学入ってからですね。
筑波大学の中にちっちゃい美大みたいなのがあるんですけど、
そこは最初の授業で50人くらいでデッサンを描くんです。
ぼくも入学する前に受験勉強として30枚くらいは描いたことがあったんですけど、なんとビリだったんですよ!
先生に、「きみ、よく大学入れたね?」って言われて。すごいはずかしかったです。笑。
昔から絵は上手じゃないですよ。目の前にあるものをそっくりに描くのはすごくヘタなので。
なんでデッサンがヘタかっていうと、すっごく薄く描くからなんですよね。


――薄く描くのには、なにか理由があるのですか?


それは、間違ってたら消せなくなるからっていう理由で、濃く描けないんですよ。
濃く描いて途中でまちがえたら消せないじゃないですか! もとに戻れない恐怖感です。
だから、デッサンも、ちょっと離れると見えてこないので、上手い下手の話じゃないですね。
絵になってないんですよね。なので、二度とデッサンなんてするまいと思ってました。
そのあと、立体造形をするときに、つくる前にデザイン画みたいなものを描いてたんですよね。
物をつくる前なので、目の前に何もないじゃないですか。
なので、見ないで描くっていうことをはじめたんですよね。
物を見ないで描いているので、似てなくても自分の中で言い訳になるんですよ。
「だって見てないんだもん。描けるわけないじゃんそんなの。」って。笑。
だから、堂々と人に見せられるんですよね。



それと、今でも筆圧は弱いんですけど、ある時からペンで描くようになったんですよね。
ペンで描くと、消えないじゃないですか。消えないし、筆圧が弱くても濃くなるんですよね。
「もう描いちゃったし、消せないからしょうがないじゃん!」って、また自分への言い訳ができるのでね。
なので、「見ないで描く」っていうのと「ペンで描く」っていうことで、こういう絵になったんですよね。



ヨシタケさん、愛用のペンはコレ!


――でも、ペンで描いたら後戻りできないですが、大丈夫ですか?


ヨシタケ そうなんですよ。だから、間違えそうなやつは描かないです、そもそも。笑。
丸を描いて点をふたつかくと、なんとなく顔に見えるんですよね。
それって、もう絵じゃなくて記号の寄せ集めなんですよね。文字といっしょです。
「あ」っていう文字って、下手でもうまくても「あ」って読める。
だから、それと同じで、丸とか四角を寄せ集めると、
立った人間か座っている人間かってことは、みんなに伝わるんですよ。


個性とかタッチとかっていらなくて、記号の寄せ集めで、
顔が笑っているのか横向いているのか下向いているのかだけはわかる。
ぼくにとってはそれだけが記録できればいいんですよ。
だからうまい(上手な)文字を書く必要はなくて、下手でもいい文章が書ければいいな、って。
「うまい文字」と「うまい文章」って違うじゃないですか。
「何が描いてあるか」さえわかれば、「読む」ことはできる。内容はわかる。
だったら、面白い内容が描ければいいやって思えたんですよね。


さらに、今みたいなスケッチを描くようになったのは、会社に入ってからですね。
入社したては、仕事ってあんまりないじゃないですか。
かといって、暇そうにしているわけにもいかないので、企画書をつくっているふりして、
ずっとらくがきしてたんですね。でも、職場がせまかったので、うしろを頻繁に先輩方が通るんですよ。
そのときにらくがきしてるってわかると、さすがにちょっと申し訳ないので、
うしろに人の気配を感じたら、ぱっと隠せるように、ちっちゃーく描いてたんですね。
だから今でも絵がちっちゃいんですけど。


――隠せるようにちいさく描いていたとは、想像もつきませんでした。


ヨシタケ これが実際の絵です。

――本当にちいさいですね!


ヨシタケ 会社に入っていろいろとストレスがたまるんですよ。笑。
なので、イラストに愚痴みたいな一言を書き添えるようになったんですよ。
そういうことを自分のためだけにずっとやってたんですけど、
ある日、うっかりしていて先輩にみつかっちゃうんですよね。隠してたのに。
でも運がいいことに、たまたま見つかった人が、女性の方で、「かわいい!」って言ってくれたんですよ。
で、「あ、ほめられた!」って気を良くしちゃったんですよねー。
そのあと、描いてたものを深夜のコンビニで全部コピーして、
切り離して紙に貼って、自費出版の出版社に持って行ったんです。
「もっとはじっこまでちゃんとノリ貼ってください」とか言われながら。笑。自作のイラスト集ですね。


その頃、立体作品の個展をぼちぼちやっていたので、最初はその会場で手売りしてたんですね。
でも、300部くらいつくって、狭い部屋に置いていたんですけど、
全然売れもしないんで、最後のほうはどんどんあげてたんですよ。
そうしたら、それが色んな人の手に渡って、
それがパルコ出版さんから「本にしませんか?」って話をいただいたんですね。


――ついに、イラストレーター・ヨシタケシンスケのデビューですね!


イラストレーター・ヨシタケシンスケさんには、本当にたくさんのファンがいらっしゃるようです。
今回、絵本『りんごかもしれない』を出すにあたって、「待ってました!」の声を多く耳にします。
この週末までには、広い範囲の書店さんに書籍が置かれることと思います。
ぜひぜひ、お手にとってご覧いただき、お友だちにおすすめしてくださいね。


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(広報・まつや)