ブロンズ新社公式ブログ

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もっと知りたい! ヨシタケシンスケさん<1>

ヨシタケシンスケさんを華々しく絵本業界にデビューさせるべく、
(もちろん『りんごかもしれない』もたくさん売りたい)
ブロンズはいろいろなPRのしかけを考えています。このインタビューも企画の一環です。
先日、facebookに公式ファンページをオープンしましたので、ぜひご覧くださいね!


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この日、インタビューの前に、営業部とPRについて打ち合わせをして、
著者であるヨシタケさんの絵心と発想力をたくさんお借りすることになりました!
つまり、POPをかきおろしたり、制作裏話のひとコマをかいてもらったり……
PR活動に大いに協力して(させられる?)いただきます。


ヨシタケシンスケ プロフィール】
1973年神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。
日常のさりげないひとコマを独特の角度で切り取ったスケッチ集や、
児童書の挿絵、装画、広告美術など、多岐にわたり作品を発表。
主な著書に、スケッチ集『しかもフタが無い』(PARCO出版)、
『結局できずじまい』『せまいぞドキドキ』(講談社)、
『トリセツ・カラダ』(文・海堂尊/宝島社)などがある。2児の父。


さて、インタビュー、いきなりの爆弾発言からはじまりました!


* * *


――打ち合わせを終えて、いかがですか?


ヨシタケシンスケ 以下・ヨシタケ)
「売ろうとしてくれている!」という感じで、単純に嬉しいですね。みなさん、お仕事とはいえ。笑。
これまでは、本の出版と営業活動がセットになっていなかったので、
今回のみなさんの動きは、すごい!レコード会社みたい!と思います。インストアライブやってください、的な。
そういう意味では、すごく新鮮ですし、頑張らなきゃなって思います。


――本をつくるという一番大切なところを頑張っていただいたので、
ヨシタケさんの大きな仕事は終わっているのではと思うのですが。笑。
『りんごかもしれない』は、これまでのヨシタケさんの作品とがらりと雰囲気がかわって、
色がかなりついていますが、仕上がり(色校正)を見て、いかがでしたか?


ヨシタケ もし、この本がたくさん売れてくれたら、それは、ぼくが色をつけなかったからですね!(きっぱり)


――えー!! それ、(ブログ原稿に)書いてもいいですか?笑。


ヨシタケ ほんとそうなんですよ。ぼく、ほんと色をつけるのがダメで、色のセンスがないんですよ。
トップシークレットなんですけどね。笑。


――苦手意識があるんですか?


ヨシタケ (大きくうなずいて)すーーごいあるんですよ、苦手意識が。前からあって。だったら練習しろって感じなんですけど。


――(苦笑) でも、今イラストのお仕事のほかに、造形のお仕事をされているとおっしゃっていましたが、
そこでも色のないものをつくっているわけではないですよね?


ヨシタケ そうですね。造形の仕事も、つくっているうちは楽しいんですけど、塗装するのがゆううつなんですね。
「色をつける前がいちばんよかったな〜」みたいな。
色をつけたらダメになっちゃった! みたいなことがよくあるんですよ。


         


――今回は、イメージを伊藤(ブロンズ新社・デザイナー)に伝えたりとか、やりとりみたいなのはあったんですか?


ヨシタケいえ、最初の時点では、色はりんごにしかついていないくらいの、すごくシンプルな感じからスタートしたんです。
りんごの部分を赤くぬるくらいだったらぼくにもできるかもと、「それでいきましょう!」と返事をしました。
でも、実際やってみると、「やっぱできねえなー」と思いつつ、「こんなかんじかな?」と赤い色をぬって、
沖本さんに見ていただいたんですよね。
そしたら、「あぁ、なるほどー……色はー、うーん……、デザイナーにつけてもらいましょっか!!」とおっしゃって。
「ですよねー!! えー、ぼくもそうだなあーと思ってたんですー」と、泳いだ目で受け答えしつつ。笑。



――それは、「しゅん……」となっちゃったんですか? それとも、「クッソー!」という感じですか?


ヨシタケ それはですね、しゅんとなっているところを見せまい、見せまい、
として気丈なふりをして帰ったんですけど。ええ。笑。
でも、結果的にはプロ(編集者とデザイナー)にお願いしてよかったな、とすごく思っています。
この本でも、沖本さんのご意見をすごくいただきながら、研ぎ澄ませていったところがすごくあって。
ぼくひとりだと、ここまでの完成度の高いものにはならなかったな、と痛感しましたね。


――沖本は、今までの編集担当さんとは、違う感じでしたか?


ヨシタケ まあ、絵本がはじめてだというのもありますし、沖本さんの意見が理にかなっているので、
単純に好みの差だけではなく、こっちも納得できる理由があるので、
「たしかにそうだ。直したほうがいいな」とこちらも思えるから、いいかたちにしていこうと思えました。
やっぱり編集の人って大事だなあと思いました。80点のできのものが、90点になっていくようすっていうのは、
今回の作品づくりではじめて目にして、すごいと思いました。



――ちなみに、今回は最初から「りんご」というお題だったのですか?


ヨシタケ 最初に沖本さんにお会いした時に、沖本さんから3つくらい企画があって、
そのなかに、「りんごを手にして、いろんな見方をする」というのはどうでしょう?というのがありました。
たとえば、ひとつのりんごの重さをはかってみるとか、いろんな国の言葉で言ってみるとか、
皮と実と種に分解をするとか。どちらかといえばちょっと科学的な意味合いの強い感じですかね。
おもしろそうだったので、ちょっと考えてラフにしてみます、といろいろ考えはじめたのがきっかけでしたね。
だから、モチーフ自体は最初からいただいた「りんご」でした。


――ラフを考えてみて、どうでしたか?


ヨシタケ 本にすることを考えていくと、物語(ストーリー)にならないっていうのがあって。
どうしたらおもしろくなるかな、と自分のなかで色々考えていくと、
じゃあ、いろいろな角度で見るんじゃなくて、「りんごじゃないもの」として見てみるのはどうだろうと。
男の子がうちにたまたま置いてあるりんごをみて、「りんごじゃないかもしれない」という
「かもしれない」というキーワードがでたときに、「いける!」と思ったんですよね。


――きた!みたいな。


ヨシタケ 「かもしれない」でという言葉でくくると、全部とりこめる。
あっていることも、まちがっていることも、全部その言葉の中に吸収できるから、広げられるし、
すべてのとっかかりにもなるっていうのがありますね。タイトルにもなるし。
ぼく、だいたいタイトルが先なんです。本にしろ何にしろ、なんかタイトルを先に決めるのが好きで。
そこで気に入ったタイトルができると、「中身はどんなかんじなんだろう?」って想像できるというか。
テンションがあがるんですよね。それで、ざーっとラフをまとめたやつを、沖本さんにお送りしたんですよ。
ただ、それは最初に打ち合わせた企画コンセプトとはちがって、
あってるのは「りんご」ってことだけなんですよね。笑。
だから、「どうですかね〜」とおずおず出したら、「いい!!」ってお返事をいただいて、
「うわーー、よかった」っていう感じでした。


――ほっとしましたか?


ヨシタケ それは、すーーごいほっとしました。
「そうじゃなくてー、私の話聞いてた?」って言われることも十分予想してたっていうか。笑。
だから、「ほんとよかったー」って思いましたよ。


――そういえば、ラフがあがってきたときに、
(沖本が)「すっごいのきたー!」って、テンションあがってましたよ。


ヨシタケ そうなんですか!笑。


――見て見てー!って。


ヨシタケ 「かもしれない」という言葉から、アイディアがいろいろ出てきた。それがすごくうれしかったですね。
そして、それをみとめてもらってすごくよかったな、っていうのがありますね。
とっかかりとして、最初に自由度の高いお題をいただいて、自分なりの答えを出すことができたことで、
「こういう方法もあるんだ」と、このシステム自体が新鮮でしたね。
こっちも考えがいがあるというか、どうしたら自分側にひきよせられるかを考えられたので。
お題をくれた人に「こういう答え考えたんだけど、どう?」って
喜んでもらえる嬉しさみたいなのはすごくありますね。


         


――これが、はじめての絵本作品ですが、どうでしたか?


ヨシタケ ぼく自身も、絵本はいつかやりたいと思っていたんですけど、すごく苦手意識というか。
母親がすごく絵本が好きで、小さいころから文庫をやっていたりしたので、
ぼくにとって絵本て「聖域」になっていたんですよね。
イラストの仕事をはじめてからも、「絵本どうですか?」という話はあったんですけど、
やっぱりやり方が単純にわからなかったというか。


――具体的に、どうつくったらいいのか、ということですね?


ヨシタケ そうなんです。自分と絵本との距離感がつかめてない部分がすごくあって。
子どもの目線への下げ方とか、物語のつくりかたとか。
だけど、今回沖本さんからいろいろお話を聞くなかで、今までのルールでやる必要もないし、
ぼくなりのアプローチの方法があるんじゃないかと思うと、すごく救われたというか。
「やり方あるんだ!やってもいいんだ!」っていうのがすごくあったんですよ。
今回、ぼくなりの方法で「児童書」に落とし込むことができるんだなっていうのが、
すごく自信になりましたね。自分にとっての絵本のイメージが、いい感じでくずれたというか、
くずしてもいいんだってことがわかったっていうのが、大きな気づきですね。


* * *


ヨシタケさんは、イラストのお仕事のほかに、造形のお仕事もされています。
コマ撮りアニメーションの美術などを手がけているプロダクションに所属しているそうです。
それぞれの「お仕事」についても伺いました。【続】


(広報・まつや)